倉庫や物流施設では、製品の品質維持のために温度だけでなく「湿度」の管理が欠かせません。特に日本は、梅雨や冬の乾燥など気候の影響で、年間を通して湿度が大きく変動し、製品にさまざまな影響を与えるリスクがあります。
こうした課題に対し、デシカント空調は安定した湿度管理を実現するソリューションとして注目されています。
倉庫や物流拠点では、湿度の管理が製品の保管品質に直結します。湿度が高すぎる場合は、カビの発生や金属部品の錆び、紙製品の波打ち、食品の品質劣化など、さまざまなトラブルが発生。一方で、湿度が低すぎる場合には、木材や紙製品の過乾燥や静電気の発生リスクもあります。
このような湿度由来のトラブルは、製品の価値低下や廃棄につながり、最終的にはコストの増加を招く要因です。そのため、物流拠点では安定した湿度環境を維持できる空調システムの導入が重要です。適切な湿度制御により、製品の品質保持と業務効率の向上が図れます。
デシカント空調は、一般的なエアコンとは異なる方式で湿度をコントロールするシステムです。その核となるのは、水分を非常によく吸着する性質を持つ「デシカント素子」(吸湿材)です。
デシカント素子を組み込んだローターに湿った空気を通過させると、空気中の水分が素子に吸着します。水分を吸着した素子は、別のエリアでヒーターなどにより加熱され、水分を含んだ空気が建物の外部へ排出される仕組みです。
この方式は、空気を露点温度以下に冷やすことなく除湿が可能であり、温度に影響されずに湿度のみをコントロールしやすい点が特徴です。
デシカント方式は、温度と湿度を個別に制御しやすい構造になっています。そのため、夏場の高い湿度を除去しつつ温度の過度な低下を防いだり、冬場の乾燥を抑えつつ温度の過度な上昇も回避できたりと、保管物にとって適した環境を維持しやすいのです。
また、外気を取り込みながら湿度調整を行えるシステムもあり、換気を兼ね備えた快適な空間づくりをサポートします。
一部のデシカント空調システムでは、吸湿・排湿の過程やフィルター機能を通じて、空気中のニオイや粒子に配慮した設計を実現。これにより、温度と湿度の管理に加え、ニオイや微粒子など空気中の要素にも対応した制御が可能です。
デシカント空調は、その精密な湿度コントロール能力により、さまざまな倉庫・物流施設で湿度による課題を解決しています。
ある物流施設では、環境性能の高い設備として、デシカント空調と地中熱ヒートポンプを採用しました。同施設はZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得しており、省エネと創エネの取り組みにより、CO2排出量を実質ゼロに近づける設計が施されています。
デシカント空調は、湿気を化学的に吸着し余分な水分を持ち込まないため、標準的なエアコンと比較して電気代を約20%削減できる効果が期待できるとのこと。温度と湿度も個別に調整できるため、快適性を損なうことなく省エネルギーを実現できます。
ある冷凍冷蔵倉庫では、庫内の湿気とカビの問題が深刻化していました。搬入口からの外気流入が原因で、製品保管時に結露やカビが発生し、品質管理に影響を及ぼしていたのです。この課題に対応するため、三菱電機のデシカント除湿機を導入しました。
その結果、庫内の湿度変動を抑え、安定した湿度環境を維持できるようになり、品質の向上につながりました。
食品を扱う冷蔵倉庫について、新晃工業のデシカント除湿機が導入されました。導入前は、搬入口からの外気流入で湿度が上昇し、庫内の結露や霜・氷の付着が課題でした。
デシカント除湿機の導入により、湿気の流入を抑制し、室内を安定した低い湿度に保つことが可能になりました。課題だった結露や着霜が緩和され、衛生的で安全な作業環境を構築しました。
上記のシステムを提供する新晃工業は、一般建築から業務用まで幅広い空調製品を手がけるメーカーです。工場・倉庫・公共施設など、用途に応じた空調提案を得意としています。
倉庫や物流施設では、精密機器、紙製品、食品、化学品など、扱う保管物によって適正な湿度条件が大きく異なります。たとえば、紙製品や木材は過乾燥によって変形しやすく、精密機器は結露や静電気の影響を受けやすいといった特徴があります。
そのため、デシカント空調を導入する際には、保管物の特性に応じた湿度制御が可能なシステム設計であるかを確認することが重要です。施設全体ではなくゾーンごとの制御が必要となる場合もあり、柔軟な設計対応が求められます。
デシカント空調は高精度な湿度管理が可能である一方、一般的な空調機と比べて初期費用が高めです。しかし、製品の劣化や廃棄ロスを低減し、保管品質を長期的に維持できることから、結果的にコスト削減につながるケースも少なくありません。
また、省エネ設計や運用効率の高さにより、ランニングコストの削減も見込めます。導入を検討する際は、イニシャルコストだけでなく、保管品質への影響や運用負荷軽減といったトータルの効果を含めて判断することが重要です。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)