デシカント空調は、一般的な全館空調に比べて湿度制御性能が高く、製造業や商業施設、研究施設など、厳格な湿度管理が求められる現場で多く採用されています。
導入費用は施設規模やシステム構成などによって、数百万円から数千万円規模まで大きく変動するため、見積時には内訳を慎重に確認しましょう。
デシカント空調機器の導入費用は、施設の規模や求められる温湿度精度、システム構成によって大きく変動します。
一般的な住宅向けの全館空調機器では100万~300万円程度が相場(※1)ですが、デシカント空調は特に湿度管理が重要な製造業、商業施設、研究施設などで採用されます。そのため、より高性能かつ複雑なシステムが必要となる場合が多く、導入費用も高額です。
例えば、店舗面積約1,600m²の食品スーパーへの導入試算では、デシカント空調機器と補助熱源システムの組み合わせにより、機器費用・工事費用を含めた初期導入費は約2,500万~3,200万円と算出されています(※2)。
この数値はあくまでシミュレーション上の一例であり、実際の施設では設備構成や熱源の選定によって大きく変動します。導入検討時には、施設条件に応じた見積もりを取りましょう。
デシカント空調機の本体価格は、処理風量や除湿能力、熱回収装置(顕熱交換器)の有無、加湿機能の有無など、機種の仕様や性能によって大きく変わります。
小規模な倉庫向けのものから、大規模工場やクリーンルームに対応した高性能モデルまで多様に展開されており、選定には導入先の規模や用途に応じた温湿度・清浄度の要件を踏まえることが重要です。
一般的に、対象とする部屋が広くなるほど、必要な処理能力も高くなり、それに伴って本体価格も上昇する傾向にあります。
デシカント空調機器は、空調機器本体だけでなく、空調システム全体を構成するさまざまな付帯設備が必要です。主な付帯設備には以下のようなものがあります。
それぞれがシステム内で重要な役割を担い、快適で安定した室内環境を維持します。
導入費用には、機器の購入費用に加えて、据付工事や電気・ダクト工事、動作確認にかかる費用が含まれます。見積時には内訳が明確かどうか、また作業範囲が適切かを確認しましょう。
設置工事費 | 空調機本体の据付作業、空気を送るためのダクトの設置工事、機器を稼働させるための電源工事など |
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設計費 | 施設の熱負荷計算(※)に基づいた空調容量の決定、温湿度ゾーニング、機器やダクトのレイアウト設計などにかかる費用。専門の設備設計事務所に依頼する場合もあり |
試運転・バランス調整費 | 実際に機器を運転し、設計通りの風量や温湿度が確保されているかを確認・調整するための費用 |
医薬品工場、精密機器工場、リチウムイオン電池工場、液晶製造工場など、厳格な湿度・清浄度管理や露点管理が求められる環境では、標準的なデシカント空調機器に比べて追加コストが発生しやすい傾向があります。
追加コストが生じる主な要因は、以下のような高度な構成や設備対応が求められる点です。
求められる要件レベルが高くなるほど、システム構成は複雑化し、費用も増加します。
医療・福祉施設では、快適で衛生的な室内環境を保つために、デシカント空調の導入が選ばれることがあります。ある介護老人保健施設では、空調設備更新に伴い、デシカント空調機器34台と高効率顕熱空調機器63台、あわせて97台の空調機器を導入しました。
導入費用は約6,500万円で、想定省エネ率は39.1%と見込まれています。
既に稼働している施設にデシカント空調を導入または増設する場合、既存の空調機器(冷房や送風系統)との連携が可能かどうかが重要なポイントです。デシカント空調で湿度を処理し、既存のシステムで温度を調整するといった役割分担を行うことで、効率的な運転が可能になります。
それぞれの制御システムを適切に統合できるか、連携運転に対応できるか、システム間の互換性や制御ロジックの調整がスムーズに行えるかを確認しましょう。
デシカント空調機は、一般的な空調機に比べてサイズが大きく、デシカントローター(除湿用の回転体)や熱交換器などを内蔵しているため、機器本体の設置スペースを十分に確保する必要があります。機器の重量も考慮し、設置場所の構造耐力も確認しましょう。
メンテナンスやフィルター交換など、日常管理を考慮した機器周辺のメンテナンス動線も重要です。屋外に設置する場合、運転時の騒音が発生するため、周辺環境への配慮として防音対策も合わせて検討してください。
デシカント空調機器の導入工事にかかる期間は、施設の規模、導入台数、既存設備の有無や更新範囲によって大きく異なります。稼働中の工場や商業施設での工事の場合、生産ラインや営業への影響を最小限に抑えなくてはなりません。
工事期間中の代替となる仮設空調の設置・運転を行ったり、施設の非稼働時間帯に集中的に作業を進めたりと、綿密な計画を立てましょう。
事前の計画段階で施工業者と密に連携し、業務への影響を考慮した無理のない工程を組むことが不可欠です。
デシカント空調機器の導入を検討する際は、複数の専門業者から見積を取得し、比較検討します。提案される機器のメーカーや機種、能力だけでなく、システム構成、付帯設備の範囲、工事内容、価格にも業者間で差が生じるケースがあります。
単に価格の安さだけで判断するのではなく、提示されたシステムが自社の要求仕様を満たしているかどうかが重要です。将来的な拡張性やメンテナンス性、提供されるアフターサポート体制なども含めて、総合的に比較検討することが適切なデシカント空調機器の導入に繋がります。
見積金額の総額だけに注目するのではなく、その内訳が明確であるか、各項目の費用に妥当性があるか、そして必要な機能や工事範囲が過不足なく含まれているか確認することが重要です。
気になる点があれば遠慮せずに業者へ質問し、提案内容の根拠や仕様について納得できるまで説明を求めましょう。事前にしっかり確認しておくと、導入後の想定外のコストや手戻りを防ぎ、自社にとって適切なシステムを無駄のないコストで導入することにつながります。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)