医薬品製造においては、GMP(適正製造基準)に則った品質管理体制のもと、温度・湿度・空気清浄度といった空調管理が製造プロセスの安定運用に大きく関わります。そのため、製造環境の整備と管理が極めて重要です。
ここでは、医薬品工場におけるデシカント空調の特性や、GMP環境下での運用メリット、導入時における検討ポイントについて解説します。
GMPでは、製造環境における温度・湿度・空気清浄度の管理が必要です。これらの条件が不安定になると、製造エリアの衛生状態が悪化し、製造条件の再現性や異物混入リスクの管理に影響を及ぼす可能性があります。
特に、異物混入リスクを抑える空調管理が求められるクリーンルームでは、設定された温度・湿度・清浄度といった環境条件を、安定して維持することが重要です。
空調システムは、そのような基準を安定的に満たすためのインフラであり、外気処理や室内の温湿度制御を適切に行い、製造工程の再現性や作業効率を安定させます。
デシカント空調は、化学吸湿剤やシリカゲルなど水分を吸着する乾燥剤を用いた除湿方式で、温度変動に左右されにくく、湿度変動を抑えた環境管理が可能な空調システムです。冷却除湿方式とは異なり、低湿度条件の維持に適しています。
デシカント素子を用いたローターが空気中の水分を吸着し、加熱により水分を放出。この空気は外部に排出される構造により、除湿と排湿が同時に可能です。
空気を露点以下まで冷却せずに湿度制御を行えるため、室内の温度影響を最小限に抑えながら、目標とする湿度に調整しやすくなります。
医薬品工場におけるデシカント空調の導入事例は確認できませんでした。
GMPに準拠した製造環境では、設備の導入・運用において「一貫性のある結果を継続的に得られること」を科学的に証明・文書化するバリデーション対応が求められます。デシカント空調もその対象となるため、監査対応力や記録体制を踏まえた設計が不可欠です。
具体的には、温湿度センサーの配置、計測精度、データ記録の方式や出力機能などを設計段階から考慮することが重要です。記録されたデータがトレーサビリティを確保できる形式であること、そして監査や検証に対応可能な構成となっているかが、導入の成否を左右します。
医薬品工場では、高度な温湿度管理と空気清浄度の維持が求められるため、空調設備のエネルギー負荷が大きくなりがちです。デシカント空調は、低湿度環境の維持に優れており、冷却除湿方式に比べて過剰な冷却を必要とせず、効率的に除湿できるという特長があります。
ただし、吸湿剤の再生には熱エネルギーを使用するため、エネルギー源の選定や他設備との熱連携が重要。運用モードの効率化や熱回収の工夫によって、電力消費を抑えた安定稼働が可能です。
導入を検討する際には、初期費用だけでなく、将来的なメンテナンス性・運用コスト・省エネ効果などを含めた中長期的な視点での評価が不可欠となります。
衛生レベルの維持や製造環境の安定に直結する重要な要素であり、特に湿度の安定制御は、製造工程全体の信頼性に大きく影響します。
デシカント空調は、温度に左右されずに湿度を制御できる技術であり、クリーンルームや高精度環境が求められる医薬品製造において、有効な選択肢の一つです。
また、バリデーション対応、省エネ性能、遠隔監視などによる運用管理の効率化といった点でも、GMP要件に適合した導入が可能です。品質基準の確保とコスト管理の両立を図りたい医薬品工場にとって、デシカント空調は高い導入効果が期待できるソリューションといえるでしょう。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)