手術室の結露防止に適した空調システム｜デシカント方式の導入メリット

執刀医のコンディション維持や感染リスク低減のため、低温に保たれる手術室。しかし、その低温環境が原因で、照明器具や吹出口に「結露」が発生し、衛生管理や医療機器の安定稼働に深刻な影響を及ぼすケースがあります。

「冷やせば冷やすほど結露が悪化するのはなぜ？」「この問題を根本から解決できる空調システムはないのか？」

この記事では、手術室における結露の根本原因から、その解決策として「デシカント方式」の空調システムがなぜ有効なのか、そのメリットを詳しく解説します。自院の環境に最適な空調選びのヒントとして、ぜひご一読ください。

なぜ手術室の結露は防ぎにくいのか？その原因とリスク

まず、なぜ手術室で結露が発生しやすいのか、その特殊な環境要因と、従来の空調システムが抱える課題を解説します。

手術室特有の環境要因

手術室は、他の部屋にはない特殊な環境下にあり、これが結露の発生を助長しています。

• 低温設定： 執刀医の集中力維持やSSI（手術部位感染）リスク低減のため、室温が20～24℃程度の低温に設定されます。
• 高い湿度負荷： 夏場の湿った外気の侵入、医療スタッフの呼吸や発汗、滅菌器からの蒸気など、室内には常に湿度を上げる要因が存在します。
• 冷たい表面の存在： 強力な照明で熱を持つ無影灯の冷却面や、冷たい空気を送り出す空調吹出口、医療モニターなど、室温より温度が低い箇所が多く、結露の発生ポイントとなります。

従来の冷却除湿方式の限界

一般的な空調システムは、空気を冷やすことで空気中の水分を結露させて取り除く「冷却除湿」という方式を採用しています。しかし、この方式はもともと低温である手術室の環境とは相性が悪く、根本的な解決が困難でした。

空気を冷やして除湿するためには、目標室温よりもさらに低い温度まで空気を冷やす必要があります。低温の手術室でこれを行うと、エネルギー効率が悪いだけでなく、冷やされた空気の相対湿度が高止まりしてしまいます。その結果、冷たい空気が吹出口や照明器具に触れた瞬間に結露してしまう、というジレンマに陥っていたのです。

結露がもたらす重大なリスク

手術室での結露は、単なる不快な現象ではなく、医療の質と安全を脅かす重大なリスクをはらんでいます。

• 感染リスクの増大： 結露によって生じた水滴は、空気中の細菌やカビの温床となります。この水滴が術野（手術を行う清潔な領域）に落下すれば、深刻な院内感染を引き起こす原因となりかねません。
• 医療機器へのダメージ： 手術室には、数千万円もするような精密な電子医療機器が数多く設置されています。これらの機器に水滴が落下すれば、故障や誤作動を引き起こし、手術の進行に支障をきたすリスクがあります。
• 医療スタッフへの影響： 結露水が床に滴下すれば、スタッフの転倒事故の原因となります。また、湿度の高い「じっとり」とした空気は、長時間にわたる手術で集中力を要する医療スタッフにとって大きなストレスとなります。

手術室の結露防止にデシカント方式が最適な理由

従来の冷却除湿が抱える課題に対し、デシカント方式の空調システムは、手術室の結露問題に対する極めて有効な解決策となります。その具体的なメリットを3つのポイントで解説します。

メリット1：低温環境下でもパワフルな除湿を実現

デシカント方式は、吸湿材（デシカント）が空気中の水分を化学的に直接吸収して除去します。そのため、空気を過度に冷やすことなく湿度だけを的確にコントロール可能です。この特性により、室温を20～24℃といった低温に保ちながら、相対湿度を結露が発生しにくい40～50%RHの範囲に安定して維持することができます。

メリット2：優れた衛生管理と感染対策への貢献

結露の発生源である「高い湿度」を根本から断つことで、天井や壁、機器表面でのカビや細菌の繁殖リスクを大幅に低減できます。特に、液体デシカント（湿式）を用いるシステムの中には、除湿に使う溶液自体が空気中の浮遊菌を捕集・除菌する効果を持つものもあります。これにより、手術室により清浄な空気を供給し、高度な衛生環境の構築に貢献します。

メリット3：エネルギー効率の改善と省エネ

デシカント方式は、潜熱（湿度）と顕熱（温度）を分けて効率的に制御できる空調システムです。従来の空調のように、除湿のために一度空気を冷やしすぎた後に、再度温め直す（再熱）といった無駄なエネルギー消費がありません。これにより、病院全体のランニングコスト削減にも繋がり、環境負荷の低減にも貢献します。

失敗しないための重要ポイント：手術室の要件に合った製品選び

デシカント方式が手術室の結露対策に有効であるとご理解いただけたかと思います。しかし、導入を成功させるためには、次に「どの製品を選ぶべきか」という、より重要なステップが待っています。

手術室は、一般的なクリーンルーム以上に高度な清浄度と24時間365日の安定稼働が求められる極めて特殊な環境です。そのため、「デシカント方式なら何でも良い」というわけでは決してありません。

• 高い除菌・除塵性能を持っているか？
• メンテナンスが容易で、長期的に衛生状態を保ちやすい構造か？
• 万が一の際に、迅速で的確なサポートを受けられるメーカーか？

上記のような、医療施設ならではの厳しい要件をクリアできる製品を見極める必要があります。導入後に「思ったより効果が出ない」「メンテナンスが大変で衛生管理に不安が残る」といった事態を避けるためにも、自院の手術室の目的と運用に最適なデシカント空調を選定することが最も重要です。

当メディア「KARADESI」では、そうした厳しい要求に応える、目的別のデシカント空調製品を厳選してご紹介しています。特に、高い衛生管理能力が求められる環境に適した製品について、以下のページで詳しく解説しています。

病院でのデシカント空調の導入事例についてもっと見る

【目的で選ぶ】
おすすめのデシカント空調3選

まとめ

手術室の深刻な結露問題は、低温環境と湿度負荷が原因であり、従来の冷却除湿方式では根本的な解決が困難でした。

デシカント方式の空調システムは、空気を過冷却することなく強力に除湿できるため、この課題を解決する最適なソリューションです。結露防止による衛生環境の劇的な向上や、医療機器の保護、さらには省エネ効果も期待できます。

ただし、その効果を最大限に引き出すためには、手術室という特殊な環境要件を深く理解し、高い衛生性能と信頼性を備えた、目的に合った製品を選ぶことが不可欠です。

本記事を参考に、長期的に安全・安心な手術環境を維持できる、最適な空調システムの導入をぜひご検討ください。