病院の空調環境は、患者が安心して過ごせる室内環境や医療機器の安定稼働に直結する重要な要素です。中でも湿度管理は、カビやダニが繁殖しにくい環境づくりや静電気の抑制などに関わります。
デシカント空調は、手術室やICU、病室などエリアごとに異なる温湿度管理が必要な病院に適した方式です。このページでは、その仕組みと導入事例を紹介します。
デシカント空調は、湿った空気を吸湿材(デシカント材)に通し、空気中の水分を除去する方式です。吸湿材は水分を吸着した後、ヒーターなどで加熱して再生され、繰り返し使用されます。
この方式は冷却に依存しないため、温度を大きく変えず湿度だけを調整することが可能で、省エネルギー性にも優れています。
冷却除湿方式は、空気を冷やして水分を凝結させ除去する方式です。温度低下に伴って湿度も下がるものの、湿度だけを個別に調整するのは難しく、過冷却によって室温が必要以上に下がってしまうこともあります。
精度の高い湿度管理が求められる病院では、限界がある方式といえるでしょう。
全熱交換器は、排気の熱と湿気を給気に移してエネルギーロスを抑制する装置です。
換気時の外気負荷を軽減する効果がある一方で、室内の湿度を細かく制御することは難しく、用途に応じた湿度管理には限界があります。そのため、他の空調方式と組み合わせた運用がおすすめです。
デシカント空調を活用し、快適で清潔な空気環境整備に取り組んでいる病院での導入事例をご紹介します。
ある整形外科病院では、空調における省エネルギー化を目的に、再生可能エネルギーである太陽熱を活用したアースクリーン東北のデシカント・メガクールを導入。外気処理の空調において、暖房や冷房に必要な熱と、除湿・加湿に必要な熱をそれぞれ分けて扱うことで、空間の温度と湿度を効率的に制御できる仕組みを構築しました。
アースクリーン東北では、高い省エネルギー性能を保ちながら、屋外の新鮮な空気と室内の汚れた空気を効率よく入れ替えられるデシカント空調システムを提供しています。
ICUや手術ホールなどの空気のきれいさが厳しく求められるエリアに、東プレのメディカルクリーンユニットを導入。運転音が小さく、風が直接当たりにくい送風設計で、医療従事者の集中力を妨げにくく、空間全体の快適性維持に貢献しています。
指扇病院では、除湿・加湿・浮遊粒子の抑制・脱臭機能を備えたダイナエアーのモイストプロセッサーを導入。室内が乾燥しやすい冬期の暖房稼働中も湿度40%を維持し、院内を快適に保つことができました。
このシステムを提供しているダイナエアーは、温度と湿度を独立して制御できるデシカント空調機器を得意とするメーカーです。独自の三流体熱交換方式により、除加湿と省エネ・CO₂削減を両立しています。
病院は手術室、集中治療室、病室、外来、検査室など、医療行為の内容に応じて用途が異なる空間で構成されています。各エリアごとに求められる温度や湿度、換気量の条件も異なるため、導入時にはそれぞれの用途と特性を詳細に分析し、適切な空調ゾーニング設計を行うことが重要です。
デシカント空調は高精度な湿度制御が可能な反面、他の空調方式と比較すると初期費用は高めです。しかし、衛生管理の精度が厳しく求められる病院では、空調ゾーニングの柔軟性やメンテナンス性、長期的な省エネ性能など、単なる導入コスト以上の価値が得られるケースも少なくありません。
そのため、導入前には初期費用だけでなく、運用後のランニングコストや耐用年数、管理負荷なども含めた費用対効果の視点で検討することが重要です。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)