湿度管理は、製品品質の安定や結露の防止、空間環境の維持に欠かせません。特に、低湿度が求められる製造工程や結露リスクのある倉庫、快適性が重視される商業施設では、従来の空調システムでは対応が難しいケースも見られます。
こうした環境での湿度制御に対応する技術が「デシカント空調」です。冷却を使わず除湿を行うこの方式は、省エネルギー性と高度な湿度制御の両立が可能な点で注目されています。
湿度とは、空気中の水蒸気の含有量を示す指標です。一般的に使われる「湿度」は相対湿度を意味し、これは空気中に含まれる水蒸気量が、同温度での最大保持量(飽和水蒸気量)に対してどれくらいの割合かを示します。温度が上がると飽和水蒸気量も増えるため、同じ水蒸気量でも温度によって相対湿度は変動します。
これに対して絶対湿度は、乾いた空気1kgあたりの水蒸気量(g)で示され、温度に依存せず空気中に存在する水蒸気の「絶対量」を示す指標です。デシカント空調は、この絶対湿度を直接的に減少させることで湿度を制御するシステムになります。
デシカント空調の核となる技術は、水分を吸着する性質を持つ吸湿剤の利用です。シリカゲルやゼオライト、高分子吸着材などが使われ、これを含む構造体に湿った空気を通過させることで、空気中の水分を物理的に取り除きます。冷却を伴わないため、温度に依存せず除湿が可能です。
吸湿剤を塗布・固定したデシカントローターは、ハニカム状の構造で構成され、緩やかに回転します。ローターの一部では空気中の水分を吸着し、残りの部分では高温の空気を通して吸湿剤の再生(脱着)を実施。この吸湿と再生のサイクルが連続的に行われ、安定した除湿性能が維持されます。
再生プロセスには熱エネルギーが必要ですが、50~80℃の比較的低温域で再生が可能なため、工場排熱やヒートポンプ由来の熱、太陽熱なども活用しやすくなります。これにより、エネルギー使用量の抑制と運用コストの低減が期待されます。
一般的な冷却除湿方式では、空気を露点温度以下に冷却し、結露により水分を除去します。この方法では空気の温度そのものと水分の両方を下げるため、エネルギー消費が多くなります。一方、デシカント方式では水分だけを選んで取り除けるため、より効率的に除湿が可能です。
冷却方式では除湿能力が外気温に左右されますが、デシカント方式は吸湿剤の物理吸着を利用するため、寒冷地や冷蔵倉庫といった低温条件でも湿度管理が可能です。特に、相対湿度20~30%RHのような低湿領域においても、安定した除湿性能を発揮します。
吸湿と再生を繰り返す役割を担う円筒状の部品です。表面積や通風抵抗、回転速度などの仕様が性能に大きく影響します。用途や必要な除湿量に応じて、適切な設計が求められる重要な構成要素です。
吸湿剤に蓄えられた水分を放出させるための加熱装置です。電気、蒸気、ガス、廃熱などさまざまな熱源を活用できるため、運用環境やコスト、エネルギー効率に応じた適切な選定が重要です。
処理空気および再生空気を搬送する経路とファンの設計も、システム全体の性能を左右する要素です。風量や風速、静圧のバランスを効率化することで、消費電力の抑制や除湿効率の向上が図れます。
温度補正のための冷却装置や、必要に応じた加湿装置と連動させることで、細かく温度と湿度を調整することが可能です。除湿後の空気は若干加温されるため、後段での冷却や加湿との組み合わせにより、室内の設定環境に合わせた空気の状態を得られます。
ヒートポンプと組み合わせたデシカント空調では、除湿時に回収した水分を再利用して加湿を行う無給水加湿が可能です。
例えばダイキンのヒートポンプデシカントは、再生用の熱エネルギーをヒートポンプから供給し、加湿に使用する水も除湿過程で得たものを活用するため、外部からの給水を必要としません。給排水設備の簡素化やエネルギー使用量の削減につながり、湿度の安定制御が期待できます。
気化式加湿器は水を蒸発させることで加湿を行う方式であり、蒸気式と比較して消費エネルギーを抑えられる点が特徴です。
大塚製薬徳島板野工場では、蒸気を使用しない加湿を目的に、気化式加湿器とヒートポンプチラーを組み合わせた空調システムを導入。元々は100m以上離れた設備から蒸気を長距離で送っていたため、送気ロスや配管放熱によるエネルギー損失が課題となっていました。
新システム導入後は、電気による加湿に切り替えたことで蒸気設備が不要になり、省エネ性とCO2排出削減の両立を実現しています。
デシカント空調の構造や特性を理解することで、必要な湿度レベルや運用温度、エネルギー源の確保状況、既存設備との適合性といった導入条件を踏まえた上で、適切な方式や構成を検討できるようになります。その結果、温湿度管理が求められる現場に適した設備を合理的に選定できます。
設備の構成や運用条件は現場によって異なるため、目的に合致したシステム設計を行いましょう。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)