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デシカント空調メンテナンスとトラブル対策ガイド

デシカント空調を導入する上で、性能や初期費用だけでなく、長期的な運用に不可欠な「メンテナンス」について気になる方も多いのではないでしょうか。

「メンテナンスにはどれくらいの頻度や費用がかかるのか?」「もしトラブルが起きたらどうしよう?」といった懸念は、担当者様にとって当然の疑問です。

この記事では、デシカント空調の安定稼働を支えるメンテナンスの重要性から、具体的な点検内容、頻度、費用の目安、そして万が一のトラブル事例と対策までを網羅的に解説します。

適切なメンテナンスは装置の長寿命化に繋がりますが、実は、導入する機種によってメンテナンスの手間やコストは大きく異なります。

本記事を通じて、自社の運用に最適なデシカント空調選びのヒントを見つけてください。

なぜデシカント空調にメンテナンスが必要なのか?

デシカント空調の性能を最大限に引き出し、長く安定して使い続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。その主な3つの理由を解説します。

性能維持と省エネ効果の確保

デシカント空調の心臓部である除湿ローターや、空気を取り込むフィルターは、使用するうちに汚れやホコリが蓄積します。フィルターが目詰まりを起こすと、必要な風量を取り込めず、除湿能力の低下や消費電力の増大に直結します。定期的な清掃や交換によって、導入当初の高い省エネ性能を維持することができます。

故障の予防と製品寿命の長期化

「急に動かなくなった」「異音がする」といった突発的な故障は、生産計画に大きな影響を及ぼしかねません。定期点検は、駆動用モーターやベルト、各種センサーといった部品の劣化や異常を早期に発見する絶好の機会です。大きな故障による生産ラインの停止といった重大なリスクを未然に防ぎ、装置全体の寿命を延ばすことに繋がります。

衛生環境の維持

特に食品工場や医薬品工場、病院など高い衛生基準が求められる現場では、空調機の清浄性が極めて重要です。フィルターや装置内部の汚染は、カビや雑菌の温床となり、製品への異物混入や院内感染のリスクを高める恐れがあります。HACCPやGMPの観点からも、清浄な空気を供給し続けるための定期的なメンテナンスは必須と言えるでしょう。

「フィルターの交換」と「除湿ローターの点検」の重要性

デシカント空調のメンテナンスにおいて、特に重要となるのが「フィルターの交換」と「除湿ローターの点検」です。フィルターは性能維持の基本であり、ローターはデシカント空調の心臓部。これらの状態を適切に保つことが、トラブルを未然に防ぎ、長期的なコスト削減に繋がります。

フィルター交換・ローター点検について詳しく見る

【種類別】デシカント空調のメンテナンス内容・頻度・費用

デシカント空調のメンテナンスは、吸湿材の状態によって「乾式」と「湿式」で内容が異なります。それぞれの特徴を理解し、自社で導入を検討している方式のメンテナンスを具体的にイメージしましょう。

乾式デシカント空調のメンテナンス

固体の吸湿材(シリカゲルなど)を含んだローターを回転させて除湿する方式です。

主な点検項目

  • エアフィルターの清掃・交換
  • 除湿ローターの状態確認(汚損、破損)
  • 駆動部(モーター、チェーン、ベルト)の点検、調整
  • 再生用ヒーターの動作確認
  • 各種センサーの動作確認、校正

頻度の目安

  • 日常点検:異音・異臭・異常振動の有無などを目視で確認
  • 定期点検:年1〜2回(専門業者による点検を推奨)

費用の目安

メーカーや保守契約の内容、機器の規模によって大きく異なりますが、専門業者による定期点検は1回あたり数万円〜が一般的な目安です。

湿式デシカント空調のメンテナンス

液体の吸湿材(塩化リチウム水溶液など)をスプレーして空気中の水分を除去する方式です。

主な点検項目

  • エアフィルターの清掃・交換
  • 除湿溶液の濃度・液量・汚染度の管理
  • スプレーノズルの点検・清掃
  • ポンプ、配管系の点検(液漏れなど)
  • 熱交換器の点検

頻度の目安

  • 日常点検:溶液の状態などを目視で確認
  • 定期点検:年1〜2回(専門業者による点検を推奨)

費用の目安

乾式と同様、契約内容や規模によります。ただし、除湿溶液の交換が必要になった場合は、別途費用が発生することがあります。

メンテナンス依頼のポイント

デシカント空調は専門性の高い機器のため、メンテナンスはメーカーまたは専門の保守会社に依頼するのが一般的です。多くの場合、導入時に年間保守契約を結ぶことができ、契約には定期点検や緊急時の優先対応などが含まれます。安心して運用を続けるためにも、導入時の保守契約を検討することをおすすめします。

よくあるデシカント空調のトラブル事例と対策

適切なメンテナンスを怠ると、デシカント空調の性能が低下するだけでなく、思わぬトラブルに繋がる可能性があります。ここでは、現場でよく見られる代表的なトラブル事例と、その原因・対策について解説します。

事例1:除湿能力が明らかに落ちた

「以前よりも室内の湿度が下がらない」「設定湿度になるまで時間がかかる」といった症状は、最も多く見られるトラブルの一つです。

主な原因

  • エアフィルターの深刻な目詰まり
  • 除湿ローターの劣化や汚損による吸湿性能の低下
  • ローターを乾燥させる再生用ヒーターの不具合

対策

まずは基本的なメンテナンスとして、エアフィルターの清掃または交換を行いましょう。それでも改善しない場合は、除湿ローターやヒーターといった内部機構に問題がある可能性が高いため、速やかに専門業者に点検を依頼してください。

事例2:異音や異常な振動がする

運転中に「ゴォー」「カラカラ」といった普段聞き慣れない音がしたり、本体が異常に振動したりするケースです。

主な原因

  • ファンモーターやベアリングの経年劣化、摩耗
  • 駆動用のベルトやチェーンの緩み、破損
  • 内部で部品が外れている、または異物が混入している

対策

異音や振動は、重大な故障の前兆である可能性が非常に高いです。放置すると部品の破損が広がり、修理費用が高額になる恐れがあります。異常に気づいたらすぐに運転を停止し、専門業者による点検を受けてください。

事例3:エラーが表示され停止した

本体の操作パネルやリモコンにエラーコードが表示され、運転が停止してしまうトラブルです。

主な原因

  • 各種センサーの異常、故障
  • 電気系統のトラブル
  • 安全装置(過熱防止など)の作動

対策

まずは慌てずに、取扱説明書で表示されたエラーコードの内容を確認しましょう。簡単なリセット操作で復旧する場合もありますが、解決しない場合は無理に操作せず、エラーコードを控えた上でメーカーや保守業者に連絡してください。エラーコードを伝えることで、原因の特定と対応がスムーズに進みます。

デシカント空調の故障症状と修理対応例
について詳しく見る

トラブルを避けたいなら「目的に合った製品選び」が最重要

ここまでメンテナンスの重要性やトラブル事例を見てきましたが、担当者様に最もお伝えしたいのは「トラブルを未然に防ぎ、長期的なコストを抑える鍵は、導入前の製品選びにある」ということです。

例えば、-60℃DPといった超低湿環境が求められるリチウムイオン電池の製造工場と、スーパーマーケットの冷蔵ショーケースの結露対策では、必要な性能も、重視すべきメンテナンスのポイントも全く異なります。

オーバースペックな機器は導入コストやランニングコストを無駄にしますし、逆にスペックが不足していれば、常に機器がフルパワーで稼働することになり、部品の劣化を早め、結果的にトラブルを頻発させる原因にもなりかねません。

つまり、「自社の課題は何か」「どんな環境を実現したいのか」という目的に最適な製品を選ぶことこそが、最も効果的なトラブル対策であり、長期的なコスト削減に繋がるのです。

当メディア「KARADESI」では、そうした“目的別”の視点から、最適なデシカント空調選びをサポートしています。自社にぴったりの一台を見つけるために、ぜひ以下のページもご覧ください。

【目的で選ぶ】
おすすめのデシカント空調3選

よくある質問Q&A

初めてのデシカント空調の導入・再構築・運用最適化でよく出る質問ポイントを、メンテナンス・費用・進め方・選定・運用の観点でまとめました。

Q1. 乾式と湿式では、メンテナンスコストにどんな違いがありますか?

A. 乾式はローターや再生ヒーターの清掃・点検が中心で、部品交換サイクルが長めです。一方、湿式は溶液管理(濃度・補充・フィルタリング)が定期的に必要となり、人件費や薬剤コストがやや高め。ただし、低温・衛生環境では湿式の方がトータルコストを抑えられる場合もあります。

Q2. 自社で点検するのとメーカー保守を依頼するのでは、何が違いますか?

A. 自社点検では日常的な異常検知や簡易清掃が中心となりますが、メーカー保守では再生系・センサー・制御校正まで踏み込んだ診断を実施します。
定期報告書や部品保証が付くため、安定稼働を重視する製造ラインや医薬品環境では、保守契約を推奨します。

Q3. 超低露点(−80℃〜−90℃DP)対応機は特別なメンテが必要ですか?

A. はい。再生ヒーターや吸着剤(ゼオライトなど)の劣化が性能に直結するため、温度ログと露点データの精密校正が欠かせません。年次点検での吸着材評価や再生ダクトの清掃・密閉確認を重点的に行いましょう。

Q4. フィルターの交換頻度はどのくらいですか?

A. 一般的には3〜6か月ごとが目安です。粉じんの多い現場では毎月点検し、差圧が初期値+100Pa程度になった時点で交換が推奨されます。
高性能フィルターを使う場合でも、差圧計や点検記録による“実運転ベース”の管理が重要です。

Q5. 湿度が下がらないとき、まずどこを確認すべきですか?

A.

  • ① フィルターの目詰まり
  • ② 再生温度の不足
  • ③ ローターの汚れまたは回転不良
  • ④ ダンパやシールの漏気

この順に点検すると効率的です。外気負荷が大きい場合は、外気比率の再設定や流量調整も効果があります。

Q6. 省エネ運転をするにはどんな設定が効果的ですか?

A. 過剰な低露点設定を避け、季節ごとに再生温度・外気比率・バイパス率を最適化することがポイントです。
年間を通じたログ管理により、実効除湿量あたりの電力量(kWh/kg-H₂O)をモニタリングすると改善効果を把握しやすくなります。

Q7. GMPやHACCPに対応するには、どんなメンテ管理が必要ですか?

A. 温湿度・露点・濃度などの定期校正と記録保存が必須です。
また、点検報告書のトレーサビリティ(作業者・日付・結果)が求められるため、メーカー発行の校正証明付き点検書を活用すると監査対応がスムーズです。

Q8. 除湿ローターの清掃は自社でもできますか?

A. 軽度の表面清掃(エアブローなど)は可能ですが、回転軸やシール部の分解清掃はメーカーや専門業者への委託が安全です。誤った洗浄や薬剤使用は吸着性能の低下や腐食の原因になります。

Q9. 更新(リプレイス)のタイミングはどう判断しますか?

A. 露点精度が維持できず、再生温度を上げても湿度が下がらない場合や、電力消費が基準より20〜30%増加した場合は、ローターや制御系の更新を検討するサインです。
また、10年以上経過機では制御盤更新・新方式への切替で省エネ効果が期待できます。

Q10. 導入時に“メンテしやすい”設計にするコツは?

A.

  • 前面点検スペースを確保する
  • フィルター・ベルト・配管を工具レスで交換できる構造にする
  • ログ計測・通信機能付き制御盤を採用し、遠隔モニタリング対応にしておく

初期設計段階からメンテナンス性を考慮することで、後々の運用負担が大きく変わります。

まとめ

デシカント空調の性能を維持し、長く安心して使用するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスの内容や頻度は「乾式」「湿式」といった方式によって異なるため、導入前にその違いを理解しておくことが重要です。

そして、故障やトラブルのリスクを最小限に抑えるためには、自社の使用目的や設置環境に合った、最適なデシカント空調を選定することが何よりも大切です。

デシカント空調の導入で後悔しないために、まずは自社の課題を明確にし、様々な製品を比較検討することから始めましょう。

THREE SELECTIONS
目的に応じて選ぶ
デシカント空調製品おすすめ3選
チルド食品の冷却包装
向け
カサバー
カサバー

画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)

低温度帯での省エネ稼働と衛生管理

0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。

特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。

有機EL製造・開発環境
向け
ドライセーブSSP/SZP
ドライセーブSSP/SZP

画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)

超低露点乾燥を実現する独自技術

機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。

クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。

冷蔵ショーケース結露対策
向け
カラットデシカント
カラットデシカント

画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)

営業を止めずに黒カビ・結露対策

天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。

独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。

※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)