空調の電力負担を大きくしやすい要因の一つが、湿気を取り除く「除湿」です。一般的な冷却除湿では、空気を強く冷やして水分を落とす必要があるため、条件によっては大きなエネルギーが必要になります。
デシカント空調は、こうした除湿の考え方を変え、潜熱(湿気)と顕熱(温度)を分けて処理しやすいのが特徴です。本ページでは、デシカント空調が省エネ除湿に向く理由と、導入メリットを分かりやすく整理します。
メーカー各社もその省エネ性に着目しており、例えば新晃工業は潜熱・顕熱分離により熱源効率を20〜30%向上できると案内しているほか、昭和鉄工も省エネルギーな潜熱・顕熱分離空調の有効性を訴求しています。
一般的な冷却除湿は、空気を冷やして結露させることで水分を取り除く方式です。一方、デシカント空調は、内部の吸着材や吸湿材が空気中の水分を直接吸着・吸収して除去します。
除湿の原理自体が根本的に異なるため、エネルギーの使い方が変わり、それぞれが得意とする条件も異なってきます。
空調の負荷は、温度を変化させる「顕熱」と、湿度を変化させる「潜熱」に分けられます。デシカント空調は水分除去(潜熱処理)を効率的に担うことができるため、温度調整(顕熱処理)を別の空調機に任せる「潜熱・顕熱分離」というシステム設計と非常に相性が良いのが特徴です。
新晃工業は、潜熱をデシカント空調機で、顕熱を循環空調機で分けて処理することで、従来の冷却除湿方式よりも冷水温度を高く設定でき、結果として熱源効率を20〜30%向上させることができると説明しています。この負荷の分離が、省エネ設計の核となります。
デシカント空調は、水分を吸った吸着材を乾かすための「再生熱」を必要とします。この熱源に何を選ぶかが、システム全体の省エネ性を大きく左右します。
構成によっては、工場から出る低温排熱や太陽熱などを有効活用することが可能です。条件が合致すれば、電気だけに頼らないトータルでの省エネ性を高めやすいシステムだといえます。実際、新晃工業は低温排熱や太陽熱の活用を案内しており、昭和鉄工はリタンエアデシカント方式による低温再生での省エネを訴求しています。
冷却除湿方式では、空気中の湿気を結露させて落とすために、空気を露点温度以下まで強く冷やさなければなりません。そのため、梅雨時のように高湿な外気を処理する場合や、低露点が求められる環境では、冷却にかかるエネルギー負荷が大きくなりやすい傾向があります。また、冷やしすぎた空気を適温に戻すための「再熱」が必要になる場面もあり、エネルギーロスが生じるケースもあります。
デシカント空調は水分を直接除去するため、低い湿度や低い露点温度の領域でも安定した除湿能力を発揮しやすいという特性があります。そのため、高湿度の空気を一気に処理したい場合や、精密な湿度制御が求められる現場において、冷却除湿よりも適していると評価されやすい傾向にあります。
省エネ性について比較されることの多い両者ですが、現場の条件(外気条件、必要湿度、利用できる熱源など)によって最適解は変わります。一般的なオフィス空調などでは、冷却除湿が合理的でコストパフォーマンスに優れる場面も多くあります。
一方で、低露点が求められる現場や、換気量が多く潜熱負荷が大きい現場では、デシカント空調が有力な選択肢になりやすいといえます。アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)でも、デシカント除湿などをエネルギー使用とライフサイクルコストのバランスを考慮して設計する考え方として扱っています。
建物の空調負荷の中で、湿気処理の比率(潜熱負荷)が高い現場では、デシカント空調の効果が表れやすくなります。例えば、人の出入りや換気量が多く、外気からの湿気流入が多い施設や、製造工程で水分が多く発生するような現場において、除湿にかかるエネルギーを効率化する手段として適しています。
梅雨や夏場など、外気の湿度が高い季節の影響を強く受ける施設でも有効です。新鮮な外気を大量に取り入れて処理(外気処理)する必要がある現場では、外気由来の湿気負荷をデシカント空調で効率よくカットすることで、室内空調機の負担を減らし、施設全体の省エネ化を考えやすくなります。
クリーンルーム、精密機器工場、半導体製造、食品工場、医薬品工場など、厳格な湿度管理が求められる環境にも向いています。冷却除湿だけでは効率の低下や制御の不安定さが生じやすい厳しい条件であっても、デシカント空調であれば安定した除湿が可能であり、品質の維持とエネルギー効率の両立を目指すケースで重宝されます。
デシカントの再生用に利用できる排熱(工場排熱やコージェネレーションシステムの温水など)がある現場では、ランニングコストを抑えやすくなります。また、中温冷水を有効活用してシステム全体の熱利用を最適化したい場合にも適しています。新晃工業は13℃程度の中温冷水活用を案内しており、昭和鉄工は外気負荷をほぼ処理することで、高顕熱型空調や輻射冷房といった他の省エネシステムと組み合わせやすいと説明しています。
デシカント空調の心臓部は、シリカゲルやゼオライトなどの乾燥剤(デシカント)を組み込んだローター(回転体)です。空気がこのローターを通過する際、デシカントが水分を吸着・吸収します。空気を冷やして結露させるのではなく、物質の性質を利用して水分を奪うため、除湿と温度のコントロールを切り離して考えやすくなります。
水分を吸って除湿能力が低下したデシカントは、「再生」という工程を経て再び除湿できるようになります。加熱した空気を当てて水分を蒸発・放出させる仕組みです。
この再生にどのような熱源を使うかが、システムの省エネ性を大きく左右します。昭和鉄工は、リタンエア(還気)方式を採用することで従来型よりも低温での再生が可能になり、省エネを実現できると説明しています。
仕組みの特性上、デシカント空調で湿度(潜熱)を、通常のエアコンなどで温度(顕熱)を処理する「潜熱・顕熱分離」システムと組み合わせることで、各機器が得意な処理に専念でき、熱源の無駄を抑えやすくなります。これにより、快適な環境や厳しい品質条件を、エネルギーを抑えながら両立しやすくなります。
冷却除湿だけに頼らない空調設計が可能になるため、熱源を含めたシステム全体の効率改善につながる可能性があります。特に、換気や人の熱気などで潜熱負荷が大きくなりがちな現場において、既存の空調システムと比較検討する価値があります。
製品の品質維持のために厳密な湿度制御が必要な現場において、その要求スペックを満たしつつ、エネルギー消費を抑えた運用が期待できます。適切な湿度管理は、結露やカビの発生、原材料の吸湿といったトラブルの予防にもつながり、快適性だけでなく製造工程の安定にも寄与します。
工場内に未利用の排熱がある場合など、それをデシカントの再生熱として再利用する設計が可能です。建物や工場全体のエネルギーフローの中に組み込みやすく、将来的な設備の最適化やカーボンニュートラルに向けた取り組みにも貢献できるポテンシャルを持っています。
新鮮な外気を多く取り入れる施設において、外気に含まれる大量の水分をデシカント空調で事前に処理することで、室内側の空調機の負担を大幅に軽減できます。例えば、ダイキンのDESICAは温度と湿度の個別コントロールを訴求しており、外気処理機として省エネ換気の文脈でも案内されています。
デシカント空調は、どのような環境でも一律に省エネになる魔法の設備ではありません。潜熱負荷がそれほど大きくない一般的なオフィス空調などの条件では、従来の冷却除湿方式に対する優位性が出にくい場合もあります。必要な湿度や露点条件が明確でないまま導入すると、過剰な設備投資になる恐れがあるため、用途と目的の整理が不可欠です。
デシカント空調は、空気を除湿するメインの流路とは別に、ローターを再生させるための空気流路(ファンやヒーター等)が必要です。J-STAGEに掲載された研究などでも、デシカント空調では再生流路が必要となるため空気搬送動力が課題になりうることが指摘されています。
ただし、同研究では制御の最適化によって消費電力の削減効果が示されているように、送風動力や再生熱源を含めた「システム全体」での効率をいかに高めるかが重要になります。
導入を検討する際は、機器の初期費用(イニシャルコスト)だけでなく、保守費用、熱源のランニングコスト、運転方法まで含めたライフサイクル全体で比較することが大切です。また、湿度コントロールが安定することによる「不良品の削減」や「作業環境の改善」といった副次的な効果も併せて評価することで、単純な機器価格の比較では見えにくい価値を判断しやすくなります。
梅雨から夏にかけての光熱費が膨らみやすく、除湿が空調コストを押し上げているような、冷却除湿中心の運用を見直したい現場に適しています。
食品、医薬品、精密機器、半導体工場、保管倉庫など、結露や吸湿、品質のばらつきを防ぐために、単なる快適空調以上の厳密な制御が求められる現場に向いています。
工場内に再利用可能な排熱や温熱源があり、エネルギーの再利用を進め、設備全体の最適化を狙いたい現場で導入効果を発揮しやすくなります。
換気量が多く外気負荷が大きい施設で、外気処理の見直しや「潜熱・顕熱分離」を検討したい現場において、大きな改善効果が期待できます。
デシカント空調は、冷却除湿とは根本的に除湿の仕組みが異なります。そのため、潜熱負荷の大きい現場や低露点要求のある現場において、省エネ性を発揮しやすいという特徴を持っています。
導入を成功させる鍵は、「潜熱・顕熱分離」「熱回収」「再生熱の活用」「外気処理の最適化」といった考え方を、自社の設備環境にどう組み込めるかにあります。一方で、すべての現場で一律に有利とは限らないため、事前の条件整理と、既存システムとの綿密な比較設計が重要です。
除湿の見直しによるコスト削減効果や、デシカント空調の具体的な仕組み・費用について、さらに詳しく知りたい方は以下のページも参考にしてください。
デシカント空調が「省エネ除湿に強い」といわれる背景には、潜熱と顕熱を分けて処理しやすい特性と、熱源効率や外気処理の最適化につなげやすいという仕組みの強みがあります。
特に、高湿度外気を扱う施設、人や換気による潜熱負荷が大きい施設、低露点や高精度な除湿が必要な現場において、その導入効果を検討しやすいと言えます。
一方で、再生熱や送風機の搬送動力も含めた全体設計が不可欠であり、用途に合わなければ期待通りの効果が得られないケースもあります。
導入を判断する際は、初期費用の多寡だけでなく、運用条件、利用できる熱源、求められる湿度レベル、そして長期的な光熱費の削減効果までを含めて、総合的に比較検討することが大切です。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)