電気自動車などで利用されるリチウムイオン電池や全固体電池の製造に欠かせないのがドライルームです。製品の品質を左右する低露点環境の構築には高度な空調管理が求められますが、厳密な湿度管理は高いエネルギー消費を伴います。本記事では、効率的な運営を目指すためのデシカント空調の仕組みや導入事例を解説します。
ドライルームにおいて厳密な空調管理が求められる最大の理由は、空気中の水分が製品品質に致命的な影響を及ぼすためです。リチウムイオン電池の製造プロセスにおいて、材料であるリチウムは水蒸気と激しく反応する性質を持っています。そのため、生産エリアでの湿度管理を誤ると、単なる製品の品質低下にとどまらず、安全性に関わる深刻な結果をもたらす可能性があります。一般的な夏の外気の露点温度が25℃程度であるのに対し、製造現場のドライルームではマイナス30℃からマイナス40℃、場合によってはマイナス90℃という非常に厳しい低露点環境を保つ必要があります。水分を徹底的に除去した環境を維持することが、安全な製品作りには不可欠なのです。
デシカント空調システムを導入する最大のメリットは、高い除湿性能を確保しつつ、省エネルギー化やコスト削減にも寄与できる点です。このシステムは、温度と湿度を分離して制御する仕組みを採用しています。具体的には、シリカゲルなどの吸着剤を含浸させたデシカントローターに空気を通すことで水分を吸着させ、乾燥した空気を給気します。その後、加熱した空気を用いてローターから水分を排出させることで、安定した除湿を行います。一般的な冷却除湿方式では除湿のために空気を過冷却する必要がありますが、デシカント空調ではその必要がありません。さらに、ヒートポンプバランス制御などを組み合わせることで、高くなりがちなエネルギー消費を抑制し、効率的な運用を可能にします。
実際にデシカント空調システムを導入してドライルームを構築し、優れた効果を上げている現場の事例をご紹介します。神奈川県某所の現場では、新たにデシカント除湿空調機を用いたドライクリーンルームが構築されました。この事例では、既存の古い機器や設備を撤去および改修することで新設機器のためのスペースを確保し、結果として室内空気を23℃(±2℃)に保ちつつ、露点温度マイナス40℃という厳密な環境を安定して作り出すことができます。また、別のドライルーム構築工事の事例では、ハニカム除湿機と中温用ヒートポンプエアコンを組み合わせることで、清浄度クラス100,000を保ちながら露点温度マイナス20℃以下の環境構築に成功しました。現場ごとに最適な機器選定を行うことが重要です。
引用元:東京冷機工業|ドライクリーンルーム(https://www.to-rei.jp/service/facility/cleanroom/02.html)
デシカント空調を導入する際の設計および運用のポイントは、必要な露点温度に応じた適切なシステム構築とエネルギーの有効活用です。まず、スケジュールタイマー機能を活用し、事前の使用スケジュールを登録することで、無負荷時の無駄な運転を抑えることが重要です。また、再生空気を加熱するための熱源として、工場から出る排熱や、熱回収システムから得た再生エネルギーを利用する設計を取り入れることで運用効率は向上します。目標とする製造条件と消費エネルギー要件を満たす工夫が求められます。
ドライルームにおいて製品の品質を維持するためには、水分を排除する厳格な空調管理が不可欠です。デシカント空調システムを導入することで、高度な湿度管理と運用コストの削減、そして省エネルギー化という相反する課題を両立することが可能になります。自社のプロセスに適切な露点管理や空調システムの設計を実現するため、豊富な実績を持つ専門家やメーカーへ相談を行うとよいでしょう。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)