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美術館のデシカント空調導入事例

目次

文化財を守る湿度管理と省エネを両立する、美術館向けデシカント空調の導入事例と要点を解説します。

美術館の空調に求められる湿度・温度の管理基準

美術館・博物館の空調設計では、まず「湿度と温度の恒常性」が最優先されます。カビ発生を防ぐため相対湿度は65%未満、乾燥障害を防ぐため50%以上を保ち、年間を通じて概ね50〜60%の恒湿に努めることが推奨されています。

温度は必ずしも恒温である必要はないものの、湿度制御を主眼に据えた設計とし、温度が1℃変化するだけで相対湿度は3〜5%動くため外部からの温度負荷の低減が不可欠とされています。

温度・湿度管理の事例として、九州国立博物館では収蔵庫を夏期24℃・冬期22℃に設定し、素材別に漆器60%RH、絵画55%RH、金属50%RH以下と細かく湿度を分けて管理しています。名古屋刀剣ワールドでも、温度22℃・湿度55%を通年基準に、日々の温湿度チェックを行っています。

参照元:文化庁「文化財(美術工芸品)保存施設、保存活用施設 設置・管理ハンドブック」(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/hokoku/pdf/setchi_kanri_handbook.pdf

参照元:九州国立博物館「Web連載『博物館のひみつ』温湿度の管理」(https://www.kyuhaku.jp/museum/museum_himitu01-01-06.html

参照元:名古屋刀剣ワールド「博物館と温度・湿度」(https://www.meihaku.jp/curator-tweet/curator-tweet-temperature-humidity/

美術館で発生しやすい湿度トラブルとリスク

高湿度による結露・カビの発生

相対湿度70%RHを超えるとカビが活発に繁殖し、カビはやがて虫害の連鎖を招くため、湿度上昇は文化財保存における最大の脅威の一つです。

特に問題になるのが「結露」で、空調吹出口周辺のような温度差が大きい箇所や、熱伝導率の高いスチール棚の表面など、局所的に空気の露点温度を下回る場所で発生します。

過乾燥による亀裂・ひび割れのリスク

湿度は下げすぎても文化財を傷めます。木製品や塗膜のある工芸品はひび割れの原因となるため50%以上を維持することが望ましいとされ、相対湿度が50%未満だと乾燥障害のリスクが高くなります。

紙も湿度が低下すると強度が落ち、もろく脆化します。冷却と再加熱で湿度を作り込む従来方式では、局所的な過乾燥が起きやすく、素材別に許容幅の狭い温湿度を維持する美術館運用ではリスク要因となるのです。

参照元:文化庁「文化財(美術工芸品)保存施設、保存活用施設 設置・管理ハンドブック」(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/hokoku/pdf/setchi_kanri_handbook.pdf

冷却除湿方式で美術館の湿度管理が難しい理由

従来の冷却除湿方式は、空気を露点以下まで一度冷却し水分を凝縮させたのちに再加熱するプロセスをとります。

冷却された空気は湿度の高い状態で通過するため、コイル周辺で微生物繁殖の温床となる恐れがあり、極めて低い露点を要求する美術館用途では課題が残ります。

美術館・博物館にデシカント空調が適している理由

デシカント空調は、吸着剤(デシカントローター)で空気中の水分を直接吸着し湿度を下げる方式で、冷却から再加熱を伴わないため露点まで空気を過冷却する必要がありません。

美術館・博物館では美術品の温湿度安定と観覧者の快適性を同時に満たす室内気候が必要であり、ファン騒音の少ない放射冷暖房と組み合わせた潜熱・顕熱分離空調が有効です。

また、デシカント空調は太陽熱・井水熱・排熱などの再生可能エネルギー・未利用エネルギーとの相性が良く、冷却除湿方式に比べて冷却コイル負荷を削減できるとされています。湿度制御精度と省エネ性を両立できる点で美術館用途との親和性も高いといえるでしょう。

美術館・博物館におけるデシカント空調の導入成功事例

MIZKAN MUSEUM(愛知県半田市)

2015年に開館したMIZKAN MUSEUM(延床面積5,173㎡)では、大空間の展示室にAHUとデシカント空調機を組み合わせた顕熱・潜熱分離空調が採用されています。

特徴的なのは、隣接棟屋上に設置した太陽熱温水パネルの温水をデシカントローターの再生熱源に用い、井戸水を熱源とする水熱源ヒートポンプチラーの高COP運転と組み合わせている点です。CO2濃度による外気風量制御も導入し、半田の自然と歴史を活かしたトータルエネルギーシステムを構築しています。

参照元:大阪建築技術協会「美術館へのデシカント空調の適用に関する調査研究 報告書」(https://www.kengi-osaka.or.jp/pdf/chosakenkyu/desiccant2018b.pdf

TOTOミュージアム(福岡県北九州市)

2015年竣工のTOTOミュージアム(延床面積10,797㎡)では、屋上に設置した「ソーラーチムニー」の上昇気流で得た高温空気を、夏期はデシカント外調機のローター再生熱として補助的に利用しています。

冬期は同装置で暖められた空気を陶片屑(衛生陶器製造時の陶片砕石)による蓄熱槽に蓄え、日中の外気負荷低減に活用。太陽熱を余さず使い切る排熱カスケード利用と、大空間の床吹出・天井放射併用によって省エネルギーにもつながります。

参照元:大阪建築技術協会「美術館へのデシカント空調の適用に関する調査研究 報告書」(https://www.kengi-osaka.or.jp/pdf/chosakenkyu/desiccant2018b.pdf

平城宮跡展示館(奈良県)

2018年3月に開館した国営平城宮跡歴史公園の平城宮跡展示館(平城宮いざない館)では、常設展示室にデシカント空調機と放射冷暖房を組み合わせた温湿度制御が採用されています。

マイクロコージェネレーションの排熱をデシカントローターの再生熱源として活用できることが選定理由の一つで、温湿度の変動許容範囲や在室人員による外気量変動などを総合的に考慮したうえで、4管式空調に比べて安価かつ制御性の高いシステム構成となっています。

参照元:大阪建築技術協会「美術館へのデシカント空調の適用に関する調査研究 報告書」(https://www.kengi-osaka.or.jp/pdf/chosakenkyu/desiccant2018b.pdf

東京都現代美術館の空調改修事例

1995年開館の東京都現代美術館(延床面積33,515㎡)では、建築後15年の設備更新改修において、収蔵庫を通年で室温20℃・湿度55%に設定し、来館者数に関わらず展示室の室温・湿度を一日を通して変化させない「なめらかな空調」を導入できました。

改修を担当したジョンソンコントロールズは、空調機起動時の給気温度を室温に近づける自動制御や、閉館後の夜間に外気取り入れを停止するモードを設定し、24時間運転を続けながらエネルギーロスを抑制しています。

参照元:Johnson Controls「導入事例:東京都現代美術館」(https://www.johnsoncontrols.co.jp/insights/case-study/mot

美術館向けデシカント空調の導入・運用ポイント

導入検討では、まず「再生熱源をどこから調達できるか」がシステム成立の鍵です。太陽熱、コージェネ排熱、井水熱、マイクロコージェネなど未利用エネルギーとの組み合わせによってデシカント空調の省エネ性は最大化されるため、敷地・立地のエネルギーポテンシャル評価が最初の一歩となります。

運用面では、文化庁ハンドブックが定める「シーズニング」と「モニタリング」が不可欠です。シーズニングでは、コンクリート打設後二夏以上の枯らし期間と空調設備の慣らし運転により、有害ガスと温湿度環境の安定を確認したうえで文化財を移動します。

モニタリングでは、温湿度・有害ガスを継続計測することで、季節ごとの最適な換気・空調設定に更新し、良好な保存環境と運用コスト低減を両立させましょう。

まとめ

美術館・博物館の空調には、素材ごとに異なるシビアな湿度基準と、急激な温湿度変化を許容しない安定運転が求められます。

冷却除湿方式の限界を補うデシカント空調は、太陽熱・排熱・地中熱など未利用エネルギーとの組み合わせによって、湿度精度と省エネ性を同時に高められる点で美術館用途との親和性が高い方式です。導入時はシーズニングとモニタリングを含めた総合設計がおすすめです。

THREE SELECTIONS
目的に応じて選ぶ
デシカント空調製品おすすめ3選
チルド食品の冷却包装
向け
カサバー
カサバー

画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)

低温度帯での省エネ稼働と衛生管理

0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。

特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。

有機EL製造・開発環境
向け
ドライセーブSSP/SZP
ドライセーブSSP/SZP

画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)

超低露点乾燥を実現する独自技術

機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。

クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。

冷蔵ショーケース結露対策
向け
カラットデシカント
カラットデシカント

画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)

営業を止めずに黒カビ・結露対策

天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。

独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。

※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)