クリーンルームでは、空気中の微粒子を一定の水準に管理するだけでなく、温度・湿度・露点・気流・差圧などの環境条件を安定させる必要があります。特に湿度は、結露や腐食、材料の吸湿、静電気などに関係し、製品品質や工程の安定性へ影響する重要な管理項目です。
湿度が高すぎると、製品表面や設備への結露、金属部品の錆、電子部品の絶縁不良、カビなどが発生する可能性があります。一方で、湿度を下げすぎると、静電気、粉じんの付着、材料の乾燥や変形といった別の問題が起こることがあります。
クリーンルームの湿度要件は、すべての施設に共通する一律の数値で決まるものではありません。製品特性、製造工程、清浄度クラス、顧客要求、品質基準などを踏まえて、目標湿度・目標露点・許容範囲を設定することが重要です。
本記事では、クリーンルームにおける湿度基準の考え方を整理しながら、精密機器・電子部品・半導体・医薬品などの製造環境で、デシカント式空調を活用するポイントや適用例を解説します。
クリーンルームは、空気中の粒子濃度を管理し、製品や工程を汚染から守るための制御環境です。しかし、必要な清浄度クラスを満たしていても、湿度条件が不安定であれば、製品品質や製造工程に問題が発生する場合があります。
湿度が高い環境では、冷えた製品や設備表面に結露が発生しやすくなります。結露水が電子部品や金属部品に付着すると、腐食、絶縁不良、接点不良などにつながる恐れがあります。
光学部品では曇りやカビ、粉体や原料では吸湿や固結、包装材では変形や接着不良が発生する可能性があります。天井、配管、ダクトなどの結露は、清掃負担や汚染リスクを増やす原因にもなります。
一方、湿度が低すぎると静電気が発生しやすくなり、電子部品の破損や粉じんの付着、粉体の飛散につながることがあります。樹脂、フィルム、紙などの材料では、乾燥による変形や寸法変化が起こる場合もあります。
そのため、クリーンルームでは、単に湿度を低くするのではなく、製品と工程に適した範囲で湿度を安定させることが大切です。清浄度管理と温湿度管理を一体で設計することで、製造環境の安定化につながります。
クリーンルームの湿度基準は、法令や規格によってすべての施設に共通する数値が定められているとは限りません。
ISO 14644は、主に空気中の粒子濃度による清浄度分類や、クリーンルームの設計・試験・モニタリングなどを扱う規格群です。必要な清浄度クラスは、製品や工程で許容できる粒子濃度に応じて設定されます。
一方、温度や湿度の具体的な条件は、製品特性、工程要求、設備条件、顧客仕様、社内基準などをもとに決める必要があります。
精密機器や電子部品では、結露、腐食、静電気、材料の寸法変化などを考慮します。医薬品では、原料や製品の保管条件、製造工程、GMP運用上の環境管理などを確認します。
湿度要件を設定する際は、目標値だけでなく、次の項目まで明確にすることが重要です。
湿度基準は、数値だけを決めるのではなく、測定・記録・警報・逸脱対応まで含めて運用できる状態にする必要があります。
室内空気の露点よりも製品や設備の表面温度が低くなると、空気中の水分が水滴となって付着します。低温保管された部材を搬入する場合や、冷却設備の周辺では特に注意が必要です。
高湿度や結露が続くと、金属部品や設備に錆や腐食が発生しやすくなります。精密部品では、わずかな腐食でも寸法精度、導電性、接点性能に影響することがあります。
基板や端子に水分が付着すると、絶縁抵抗の低下や短絡、漏電の原因になる可能性があります。製品表面に微粒子や汚れが付着している場合は、水分の影響が大きくなることもあります。
レンズやミラーなどの光学部品では、水分の付着による曇りが品質へ影響します。保管時に高湿度の状態が続けば、カビの発生にも注意が必要です。
粉体原料や吸湿性材料では、湿気によって固結や流動性低下が起こる場合があります。紙や樹脂フィルムなどの包装材では、変形や接着不良につながる可能性があります。
接着剤、塗料、インクなどは、湿度によって乾燥時間や密着性が変化することがあります。湿度が不安定だと、硬化状態や仕上がりにばらつきが生じる場合があります。
空調設備や冷却配管の表面温度が低い場合、天井やダクト周辺に結露が発生することがあります。水滴が室内へ落下すると、製品汚染や清掃負担の増加につながります。
湿度が高い状態を放置すると、清浄度そのものを満たしていても、製造環境や製品品質を安定させにくくなる場合があります。
空気が乾燥すると、作業者、製品、設備などに電荷が蓄積しやすくなります。電子部品や精密機器では、静電気放電による破損や潜在的な不良につながる恐れがあります。
乾燥した環境では粉体や微粒子が舞い上がりやすくなる場合があります。また、静電気によって製品や設備へ粒子が引き寄せられ、表面に付着することもあります。
樹脂、フィルム、紙、繊維などの材料は、湿度変化によって収縮や反りが発生することがあります。寸法精度が求められる工程では、わずかな変化でも品質へ影響する可能性があります。
粉体工程では、乾燥によって飛散が増えたり、静電気による設備への付着が起こったりする場合があります。供給状態が不安定になると、計量や充填にも影響します。
低湿度環境では、目や喉、皮膚の乾燥などが起こりやすくなります。長時間作業するクリーンルームでは、作業性や負担にも配慮が必要です。
湿度が低すぎると、接着剤や塗料の乾燥が早まりすぎたり、静電気によって異物が付着したりすることがあります。
低露点環境が必要な工程であっても、必要以上に除湿すると別のリスクが生じます。除湿設備だけでなく、加湿設備やイオナイザーなども活用し、工程に適した範囲を維持することが重要です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 目標相対湿度 | 製品や工程に適した通常時の湿度 |
| 目標露点 | 結露防止や低水分工程に必要な条件 |
| 許容湿度範囲 | 品質へ影響しない上限値と下限値 |
| 温度条件 | 相対湿度と結露条件に影響する室温 |
| 清浄度クラス | 対象粒径と許容される粒子濃度 |
| 換気回数・循環風量 | 発じん量や室容積に必要な空気量 |
| 室間差圧 | 隣接室からの汚染空気流入を防ぐ圧力差 |
| 外気導入量 | 室圧維持や換気に必要な外気量 |
| 作業者数・出入り頻度 | 人から発生する熱・水分と扉開閉の影響 |
| 発熱・発湿源 | 製造設備、洗浄、加熱工程などの負荷 |
| センサー位置 | 製品位置や湿度ムラを反映できる測定点 |
| 記録・警報 | 記録間隔、警報値、逸脱時の対応 |
相対湿度は温度によって変化するため、結露や低水分環境を管理する場合は露点も確認する必要があります。
また、同じクリーンルーム内でも、吹出口付近、設備裏、扉周辺、製品保管位置では湿度が異なる場合があります。代表点だけでなく、工程環境を反映できる位置へセンサーを設置することが大切です。
湿度要件は、空調機器の仕様だけでなく、測定・記録・警報・点検などの運用ルールとセットで管理することが重要です。
デシカント式空調は、吸湿材を用いて空気中の水分を取り除く方式です。空気を冷却して水分を凝縮させる方法とは異なり、水分量を狙って調整しやすい特長があります。
供給空気に含まれる水分量を制御することで、外気条件や季節による室内湿度の変動を抑えやすくなります。露点を下げることで、製品や設備への結露リスクも低減しやすくなります。
デシカント式には、冷却除湿だけでは到達しにくい低露点条件に対応しやすい方式があります。半導体、電池、吸湿性材料などを扱う工程で検討できます。
冷却設備で温度を調整し、デシカント式空調で湿度を調整することで、それぞれの役割を分けられます。湿度を下げるための過冷却や、その後の再加熱負荷を抑えられる場合があります。
クリーンルームへ導入する外気を事前に除湿することで、高湿度の外気を室内へ直接持ち込むことを防ぎやすくなります。
クリーンルーム全体ではなく、低露点が必要な装置やブースだけに除湿空気を供給することもできます。必要な範囲へ限定することで、設備負荷やエネルギー消費を抑えられる可能性があります。
ただし、デシカント式空調で湿度を下げすぎると、静電気リスクが高まる場合があります。工程ごとに上限と下限を設定し、必要に応じて加湿制御と組み合わせることが重要です。
| 比較項目 | 冷却除湿 | デシカント式空調 |
|---|---|---|
| 除湿方法 | 空気を冷却して水分を凝縮させる | 吸湿材で空気中の水分を取り除く |
| 一般的な用途 | 温度管理と通常範囲の除湿 | 湿度安定、低湿度・低露点管理 |
| 低露点対応 | 条件によって限界がある | 低露点に対応しやすい方式がある |
| 低温環境 | 霜付きや能力低下に注意 | 低温条件でも活用しやすい方式がある |
| 温湿度制御 | 冷却と除湿が連動しやすい | 温度と湿度を分けて考えやすい |
| 再加熱 | 過冷却後に必要になる場合がある | 方式や構成に応じて冷却との連携が必要 |
| 主な確認事項 | 冷却能力、霜取り、再加熱負荷 | 再生熱源、ローター性能、風量 |
一般的な温湿度条件であれば、冷却除湿を活用できる場合があります。一方、低露点が必要な工程や、室温を下げずに湿度だけを調整したい環境では、デシカント式空調が有効な選択肢になります。
クリーンルームでは、清浄度、温度、湿度、露点、差圧、省エネ性を踏まえ、複数の方式を組み合わせることも重要です。
ここからは、クリーンルームで想定される課題と対策をモデルケースとして紹介します。実際の設備仕様や効果は、施設条件や工程によって異なります。
精密機器の組立クリーンルームでは、必要な清浄度は維持できていましたが、梅雨や夏場に外気の湿度が上昇すると、室内湿度も変動していました。
低温保管された部材を持ち込んだ際の結露や、湿度変化による部材の寸法変化が懸念されていました。また、作業エリアによって湿度に差があり、代表点のセンサーだけでは実際の状態を把握しにくいことも課題でした。
外気に含まれる水分を事前に処理することで、梅雨や夏場でも室内湿度を一定範囲に保ちやすくなります。
複数地点の温湿度を記録することで湿度ムラを把握でき、ダクト配置や運転設定の見直しにも活用できます。清浄度管理と湿度管理を一体で運用しやすくなり、結露や材料変化のリスク低減につながります。
電子部品を組み立てるクリーンルームでは、冬場に室内が乾燥し、静電気が発生しやすくなっていました。一方、夏場は湿度が上がり、冷却設備や低温部材の周辺で結露が懸念されていました。
季節による湿度変動が大きく、作業エリアごとにも環境差があったため、年間を通じた安定管理が課題でした。
除湿と加湿を連携させることで、過湿による結露と過乾燥による静電気の両方を抑えやすくなります。
季節ごとの温湿度データをもとに設定を見直すことで、電子部品の取り扱い環境と作業環境を安定させやすくなります。
水分の影響を受けやすい材料を扱う工程では、クリーンルーム全体よりも低い露点条件が必要でした。
既存の冷却除湿だけでは目標露点へ安定して到達できず、作業者の出入りや材料搬入のたびに外部の湿った空気が流入していました。
必要な工程だけに低露点空気を供給することで、水分の影響を受けやすい製造環境を維持しやすくなります。
クリーンルーム全体を低露点化する方法と比べて、対象範囲を限定できるため、設備容量やエネルギー負荷の抑制にもつながります。
医薬品の製造工程では、原料や製品の吸湿を防ぐため、一定の温湿度環境を維持する必要がありました。
外気条件や人の出入りによって湿度が変動し、管理範囲から外れた場合には、製品影響の確認や原因調査が必要になることが課題でした。
また、GMP運用上、温湿度の記録、警報、逸脱時の対応、設備点検の履歴を管理できる体制も求められていました。
湿度と露点を一定範囲に維持することで、原料や製品の吸湿、設備表面の結露を抑えやすくなります。
温湿度データ、警報履歴、設備点検記録を継続して保存することで、異常発生時の原因確認や品質管理体制の強化にも役立ちます。
クリーンルームの湿度要件を決める際は、一般的な数値をそのまま採用するのではなく、製品や工程への影響を整理する必要があります。
湿度の管理範囲を狭く設定するほど、設備能力やエネルギー消費、制御精度への要求も高くなります。品質上必要な範囲を明確にし、過剰な設備仕様にならないように検討することも大切です。
必要な清浄度クラスに応じて、適切な性能のフィルターを選定します。圧力損失や交換時期を管理し、必要な循環風量を維持します。
クリーンルームへ導入する外気の温度や湿度を事前に調整します。外気に含まれる水分を処理することで、室内側の湿度負荷を抑えやすくなります。
デシカント式空調と組み合わせて、供給空気の温度を調整します。過冷却や不要な再加熱が発生しないよう、制御方法を確認します。
冬場や低湿度工程では、静電気や過乾燥を防ぐために加湿設備を使用する場合があります。除湿と加湿が同時に過剰運転しないように連携させます。
通常範囲の湿度管理には温湿度センサー、低露点工程には露点センサーを活用します。工程位置や空気の滞留箇所を考慮して設置します。
隣接室との圧力差や空気中の粒子濃度を監視し、清浄環境が維持されていることを確認します。
温度、湿度、露点、差圧、粒子濃度、設備の運転状態を一元的に監視します。異常履歴を保存することで、原因調査や運用改善に活用できます。
人や物の出入りによる粒子と湿気の流入を抑えます。低露点環境では、前室の湿度や扉の同時開放にも注意が必要です。
壁、天井、扉、配管貫通部などからの湿気流入を抑えます。冷却面の結露を防ぐため、断熱状態も確認します。
空調設備だけでなく、清掃、フィルター交換、センサー校正、警報確認などの運用を組み合わせることで、湿度要件を継続的に維持しやすくなります。
同じ目標湿度や清浄度クラスでも、室の広さ、外気量、作業者数、製造設備からの発熱・発湿量によって、必要な空調能力は異なります。
機器単体の仕様だけで判断せず、現地調査や負荷計算を依頼し、既存設備を含めたシステム全体で比較することが重要です。
必要なフィルターや循環風量だけを決め、湿度要件を設定していないと、結露、腐食、静電気などの問題が発生する可能性があります。
相対湿度は温度によって変わります。結露対策や低水分工程では、相対湿度だけでなく露点と製品表面温度も確認する必要があります。
目標露点によっては、冷却除湿だけでは安定した環境を維持しにくい場合があります。デシカント式との組み合わせを検討することが重要です。
必要以上に湿度を下げると、静電気や材料収縮、作業者の負担が増える可能性があります。湿度の上限値だけでなく下限値も設定します。
吹出口の近くだけで測定すると、製品や作業位置の実際の湿度を把握できない場合があります。気流と設備配置を考慮して設置します。
外気導入や扉の開閉、人や材料の出入りによって湿気が持ち込まれます。通常時だけでなく、最大負荷となる条件も確認する必要があります。
除湿空気の供給量を変更すると、室間差圧や気流方向に影響することがあります。給気、還気、排気を含めて調整します。
フィルターの目詰まりやデシカントローターの汚れによって、風量や除湿性能が低下する場合があります。定期的な清掃・点検が必要です。
温湿度を測定していても、警報値や異常時の対応が決まっていなければ、迅速な判断ができません。記録方法と対応手順を事前に整えます。
クリーンルームでは、空気中の粒子濃度だけでなく、温度、湿度、露点、気流、差圧を総合的に管理することが重要です。
湿度要件は、すべてのクリーンルームに共通する一律の数値ではありません。製品特性、工程リスク、清浄度クラス、顧客要求、品質基準などを踏まえて設定する必要があります。
湿度が高すぎると、結露、腐食、吸湿、カビ、絶縁不良などが発生する可能性があります。一方、湿度が低すぎると、静電気、粉じんの付着、材料の乾燥や変形が起こる場合があります。
デシカント式空調は、吸湿材によって空気中の水分を取り除き、湿度や露点を安定させやすい方式です。精密機器、電子部品、半導体、電池、医薬品などのクリーンルームや、低露点ブースで活用しやすい特長があります。
ただし、過剰な除湿は静電気や材料変化につながるため、工程ごとに適切な上限値と下限値を設定することが大切です。
導入前には、目標温度・湿度・露点、清浄度クラス、外気量、循環風量、差圧、発熱・発湿負荷を整理しましょう。
さらに、センサーの設置、記録、警報、逸脱対応、フィルター・ローターの保守、センサー校正まで含めて、自社の製品と工程に適した湿度管理システムを設計することが重要です。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)