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デシカント空調導入事例

植物工場の
デシカント空調導入事例

目次

植物工場やビニールハウスでは、作物の生育に適した環境を維持するため、温度だけでなく湿度の管理も重要です。湿度が高すぎると結露や病害の原因になり、反対に低すぎると植物の光合成に影響することがあります。

こうした湿度管理の課題に対応する方法の一つが、デシカント空調です。空気中の水分を吸着・吸収して除湿する仕組みで、冷却除湿が難しい環境や、排熱を活用したい施設でも利用が検討されています。

この記事では、植物工場や温室で湿度管理が必要な理由から、デシカント空調のメリット、実際の導入事例、導入時の注意点まで解説します。

植物工場・ビニールハウスの空調に求められる
温度・湿度の管理基準

植物工場では、光・温度・湿度・二酸化炭素濃度などを管理し、作物の生育に適した環境を整えます。ビニールハウスなどの施設園芸でも、外気温や日射、換気の状況によって室内環境が変化するため、温度と湿度を適切に調整することが大切です。

湿度管理では、相対湿度に加えて「飽差(ほうさ)」も指標として用いられます。飽差とは、空気があとどれくらい水蒸気を含むことができるかを示す値で、植物の蒸散や水分吸収の状態を把握する際に役立ちます。相対湿度が同じでも、気温が異なれば飽差は変わるため、温度と湿度を組み合わせて管理することが重要です。

施設園芸では、作物や栽培環境に応じた飽差の管理が求められます。目安として飽差3〜6g/m³程度が紹介されることもありますが、適切な範囲は作物の種類や生育段階、気温、日射などによって異なります。数値だけを一律に適用するのではなく、栽培する植物の特性や生育状況を踏まえて調整しましょう。

参照元:香川県「ミニトマト栽培における測定項目と注意点」(湿度・飽差)(https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/54213/jireisyu_minitomato.pdf)

植物を育成する場で
発生しやすい
湿度トラブルとリスク

植物工場や温室では、湿度が高すぎても低すぎても、作物の生育に悪影響を及ぼす可能性があります。安定した栽培環境を維持するには、単に湿度を下げるのではなく、病害の発生を防ぎながら植物の生理に適した状態を保つことが大切です。

高湿度による結露・病害(灰色かび病など)の発生

夜間に気温が下がると、空気中に含まれる水蒸気が飽和状態に近づき、植物の葉や果実、ハウスの内壁などに結露が発生しやすくなります。特に換気が十分にできない環境では、室内の湿度が高い状態が続き、作物が濡れた状態になりやすくなります。

こうした環境では、トマトなどの栽培で問題となる灰色かび病をはじめ、湿度に関係する病害の発生リスクが高まります。相対湿度が100%近い状態が長時間続くことは、病害対策の観点から避けたい条件です。

そのため、日中だけでなく、気温が下がる夜間の湿度を適切に管理する必要があります。換気だけでは十分に湿度を下げられない場合、除湿設備の導入も有効な対策となります。

参照元:岩手県「除湿機の灰色かび病防除効果に関する資料」(https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/222/h11fukyu_20.pdf)

過乾燥による気孔閉鎖と光合成の低下

湿度は低ければよいというわけではありません。空気が乾燥して飽差が大きくなると、植物は葉から水分が失われるのを抑えるために気孔を閉じることがあります。気孔が閉じると二酸化炭素を取り込みにくくなり、光合成が低下する可能性があります。

また、植物の蒸散や水分吸収は、気温や湿度、日射などの影響を受けます。湿度を急激に変化させたり、必要以上に乾燥させたりすると、生育に適した環境を維持できなくなるおそれがあります。

湿度管理では、病害の予防だけを目的に除湿するのではなく、飽差も確認しながら、作物の種類や生育段階に適した範囲に調整することが重要です。

冷却除湿方式で
植物工場の湿度管理が難しい理由

一般的な冷却除湿方式では、空気を冷却して露点温度以下にすることで水分を結露させ、空気中から取り除きます。ただし、除湿のために空気を冷やしすぎると、植物の生育に適した温度を維持できなくなる場合があります。その際、冷却した空気を再加熱する必要が生じると、エネルギー消費が増える可能性があります。

さらに、植物は蒸散によって水蒸気を放出するため、栽培中は継続的に湿気が発生します。特に植物が多く育つ施設では、外気から流入する水分に加え、植物から発生する水分も考慮して除湿能力を検討しなければなりません。

このように、植物工場では室温を保ちながら湿度を調整する必要があり、冷却除湿だけではエネルギー面や温湿度制御の面で課題が生じることがあります。

植物工場・温室に
デシカント空調が
適している理由

デシカント空調は、シリカゲルやゼオライトなどの除湿剤を使い、空気中の水分を吸着・吸収して除湿する方式です。吸着した水分は、除湿剤を加熱して再生することで取り除きます。

冷却して水分を結露させる方式とは異なり、空気を過度に冷やさずに除湿できることが特徴です。植物工場や温室のように、温度と湿度をそれぞれ適切に管理したい施設では、こうした仕組みが役立つでしょう。

冷やしすぎずに除湿できる

デシカント空調は、除湿剤に水分を吸着・吸収させることで空気を乾燥させます。冷却除湿のように、空気を露点温度以下まで冷やして水分を結露させる必要がありません。

そのため、除湿のために空気を過度に冷却し、再加熱する運転を抑えられる可能性があります。室温を維持しながら湿度を調整したい植物工場や温室では、温度管理と湿度管理を両立する方法の一つとして検討できます。

ただし、実際の省エネ効果は、除湿負荷や運転条件、再生に使う熱源、ほかの空調設備との組み合わせによって異なります。設備全体のエネルギー消費を踏まえて評価することが大切です。

低温環境でも除湿しやすい

冷却除湿では、空気を冷やして水分を結露させるため、低温条件では除湿能力が低下する場合があります。一方、デシカント空調は水蒸気を除湿剤に吸着・吸収させる仕組みのため、低温の空気を扱う場合にも除湿性能を確保しやすい特徴があります。

夜間の湿度上昇を抑えたい温室や、温度を大きく下げずに湿度を管理したい施設では、この特徴がメリットになる可能性があります。ただし、必要な除湿量や外気条件によって適切な機器は異なるため、導入前に性能を確認しましょう。

排熱などを再生熱源に活用できる

デシカント空調では、除湿剤に吸着・吸収された水分を取り除くために熱を利用します。システムによっては、工場や設備から発生する温水排熱、コージェネレーション設備の温水、太陽熱温水などを再生熱源として活用できます。

利用できる排熱がある施設では、未利用エネルギーを活用することで、設備全体のエネルギー効率を改善できる可能性があります。ただし、必要な温度や熱量を確保できるか、熱源の供給が運転時間と合っているかなどを事前に確認する必要があります。

また、デシカント方式は除湿剤を利用するため、冷却除湿で発生する凝縮水による機器内部の濡れを避けられます。これにより、凝縮水に起因するカビや細菌の繁殖リスクを抑えやすいことも特徴です。

【目的で選ぶ】
おすすめのデシカント空調3選

植物育成の場におけるデシカント空調の導入事例

デシカント空調は、植物の生育環境と施設利用者の快適性を両立したい温室や、夜間の高湿度による病害を防ぎたい栽培施設などで活用が検討されています。ここでは、植物園での導入事例と、トマト栽培ハウスで実施された実証試験を紹介します。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ(シンガポール)

シンガポールにある「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、地中海性気候を再現したフラワードームと、涼しく湿度の高い熱帯山岳地帯を再現したクラウドフォレストという、異なる環境の温室を備えた植物園です。

施設では、植物の生育に適した環境を維持しながら、来場者の快適性とエネルギー効率を両立することが求められました。その対策の一つとして、液体デシカント空調システム(LDCS)を採用し、エアハンドリングユニットを通して温室に供給する外気の除湿を行っています。

さらに、剪定枝や木材廃棄物などを燃料とするバイオマスコージェネレーションシステムで生成した温水を、液体デシカントシステムの再生熱源などに活用しています。温室内外の温度や湿度を監視し、空調設備を制御する仕組みも導入されています。

この事例は、デシカント空調を単独で導入するのではなく、熱源設備や空調システム、監視制御システムと組み合わせて運用している点が特徴です。施設の規模や求める環境に合わせ、複数の設備を連携させることが重要だとわかります。

参照元:トレイン・ジャパン「Gardens by the Bay」(https://jp.trane.com/ja/wp/case-studies/Gardens-by-the-Bay.html)

トマト栽培ハウスでの実証事例(ヤンマー)

ヤンマーは、デシカント除湿システムを施設園芸に活用するため、トマトを栽培する実験ハウスで実証試験を行いました。試験では、面積500m²のハウスに試作機を2台設置し、55℃の温水を供給して2年間にわたり湿度制御を実施しています。

トマト栽培では、夜間に相対湿度が上昇して結露が発生すると、カビ病などの病害につながることがあります。そこで、この試験では夜間の相対湿度を80%以下に保つことを目標に、デシカント除湿システムを運転しました。

試験結果では、デシカント除湿システムを導入していない比較対象のハウスで、夜間の相対湿度が100%近くまで上昇したのに対し、導入したハウスでは80%程度に抑えられました。また、導入区では病害の発生がほとんど見られず、比較対象区と比べて収穫量が20%増加したと報告されています。

ただし、これらは特定の条件下で行われた実証試験の結果であり、すべての栽培施設で同様の効果が得られることを保証するものではありません。導入を検討する際は、作物の種類や栽培環境、必要な除湿能力、熱源などを踏まえて評価することが重要です。

参照元:ヤンマー「温水排熱の有効利用~デシカント(熱駆動湿度制御システム)技術の紹介~」(4. 実証事例)(https://www.yanmar.com/jp/about/technology/technical_review/2017/1005_5.html)

植物工場にデシカント空調を導入する際の注意点

デシカント空調は、植物工場や温室の湿度管理に役立つ可能性がありますが、導入すれば必ず省エネや収量増加につながるわけではありません。導入前には、次の点を確認しましょう。

再生に必要な熱源を確保する

デシカント空調では、除湿剤に吸着・吸収された水分を取り除くための熱が必要です。温水排熱や太陽熱などを利用する場合は、必要な温度と熱量を確保できるか、必要な時間帯に熱源を利用できるかを確認します。

また、温水を熱源とするシステムでは、配管の設置や熱源設備との接続が必要になる場合があります。既存設備を活用するのか、新たに熱源を用意するのかによって、導入費用や施工条件が変わるため、設備全体で検討することが大切です。

栽培環境に合わせて除湿能力を選定する

必要な除湿能力は、施設の広さだけでなく、外気の温度・湿度、換気量、栽培する植物の種類や量、蒸散によって発生する水分などによって変わります。設備を選ぶ際は、これらの条件を踏まえて必要な除湿量を算定することが重要です。

また、病害対策のために湿度を下げすぎると、飽差が大きくなり、植物の気孔閉鎖や光合成の低下につながる可能性があります。相対湿度だけでなく飽差や作物の状態も確認し、適切な範囲で制御できるようにしましょう。

設置スペースとメンテナンス性を確認する

デシカント空調は、機器本体に加えて、除湿剤の再生に必要な設備や配管などを設置する場合があります。そのため、既存の空調設備と比べて設置スペースが大きくなることもあります。

導入時には、機器を置くスペースだけでなく、点検や部品交換などの作業スペースも確保しましょう。長期的に安定して運転するためには、除湿ローターなどの構成部品を含め、メーカーが定める点検・保守を継続できる計画も必要です。

初期費用と運用コストを比較する

デシカント空調は、機器本体だけでなく、熱源設備や配管、制御システムなどの費用がかかる場合があります。また、運転時には再生用の熱やファンなどの電力が必要になるため、初期費用だけでなく、導入後の運用コストも含めて比較することが大切です。

既存の熱源や排熱を活用できれば、エネルギーコストを抑えられる可能性があります。一方、熱源を新たに設置する場合は、設備費や保守費用も含めた検討が必要です。導入前に、現在の湿度管理にかかっているコストと、導入後に想定される費用を比較しましょう。

まとめ

植物工場やビニールハウスでは、温度だけでなく湿度も適切に管理する必要があります。湿度が高い状態が続くと、結露や灰色かび病などの病害につながる一方、乾燥しすぎると植物の気孔閉鎖や光合成の低下を招く可能性があります。

デシカント空調は、除湿剤を使って水分を取り除くため、空気を過度に冷却せずに除湿でき、低温環境での湿度管理や排熱の活用にも適しています。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイでの導入事例に加え、ヤンマーによるトマト栽培ハウスの実証試験では、夜間の湿度上昇を抑え、病害の発生を抑制した結果が報告されています。

ただし、導入効果は施設の条件や熱源、運転方法によって異なります。必要な除湿能力や飽差、設置スペース、初期費用、メンテナンス性を確認し、栽培する作物と施設の環境に合った設備を選定しましょう。

THREE SELECTIONS
目的に応じて選ぶ
デシカント空調製品おすすめ3選
チルド食品の冷却包装
向け
カサバー
カサバー

画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)

低温度帯での省エネ稼働と衛生管理

0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。

特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。

有機EL製造・開発環境
向け
ドライセーブSSP/SZP
ドライセーブSSP/SZP

画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)

超低露点乾燥を実現する独自技術

機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。

クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。

冷蔵ショーケース結露対策
向け
カラットデシカント
カラットデシカント

画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)

営業を止めずに黒カビ・結露対策

天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。

独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。

※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)