デシカント空調の導入を検討し始めたものの、「そもそもデシカントとは何なのか」「乾燥剤と同じものなのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、デシカントの意味や代表的な吸湿材の種類、そして水分を取り込んで再生する除湿の仕組みを基礎から解説します。
デシカント(desiccant)とは、水分を取り込む性質を持つ乾燥剤や吸湿材を指す言葉です。身近な例では、食品や精密機器の包装に入っている「シリカゲル」などがデシカントの一種にあたります。
産業用途において、デシカントは設備の中で繰り返し利用され、空気中の水分を取り除くために活用されます。この吸湿・吸着作用を利用して湿度を制御する空調方式が「デシカント空調」です。空気を冷やして結露させる一般的な冷却除湿とは、水分を取り除く原理そのものが異なります。
デシカントは英語の「desiccant」に由来しており、基本的には乾燥剤や吸湿材という意味で使われます。日常生活においては、小袋に入った使い切りの「乾燥剤」をイメージしやすいかもしれません。
一方、デシカント空調においては、吸湿材を設備内部に組み込み、水分を放出して再生させながら繰り返し使用します。そのため「乾燥剤」と「デシカント」は全く異なる物質を指すわけではなく、用途や設備の文脈によって呼び方が変わる場合があります。空調分野では、こうした吸湿材を利用する除湿方式全体を「デシカント方式」と呼びます。
空気中には目に見えない水蒸気が含まれています。デシカントは、その水分子を表面や内部へと取り込む性質を持っています。たとえば固体デシカントでは、微細な孔や大きな表面積を利用して水分を吸着し、液体デシカントでは吸湿性を持つ溶液へ水分を取り込みます。
しかし、水分を大量に取り込んだデシカントは、そのままでは吸湿能力が低下してしまいます。そこで、加熱などによって水分を放出させ、再び除湿できる状態に戻す「再生」という工程が行われます。
デシカントの働きを説明する際、「吸着」と「吸収」という言葉が使われます。
「吸着」とは、水分子などが物質の表面に付着する現象のことです。シリカゲルやゼオライトなどの固体デシカントでは、この「吸着」が中心となります。
一方「吸収」とは、水分が物質の内部へと取り込まれる現象です。塩化リチウム水溶液などの液体デシカントでは、水分を溶液側へ取り込む「吸収」を利用します。
デシカント空調では、製品の方式によってこれらを適切に使い分けます。一般的には「水分を取り込む仕組み」として理解しておけば問題ありません。
デシカントとして利用される材料には、いくつかの種類があります。吸湿材によって得意な湿度帯や再生に必要な温度、適した用途が異なるため、求める露点や温度条件に応じて使い分けることが重要です。
シリカゲルは、二酸化ケイ素を主成分とする代表的な乾燥剤です。多孔質(無数の小さな穴があいた)構造を持ち、その大きな表面積を利用して水分を吸着します。食品包装などの身近な用途から、産業用のデシカントローターまで幅広く利用されています。
比較的幅広い湿度帯で利用できるのが特徴で、デシカント空調ではハニカム(蜂の巣)構造などに担持させて利用する方式があります。製品ごとに吸着材の組成や加工方法は異なるため、詳しい性能はメーカー仕様を確認しましょう。
ゼオライトは、微細な孔を持つ結晶性の物質です。分子サイズに近い細孔を持つことから「分子ふるい」と呼ばれるものもあり、水分子を選択的に吸着する性質を利用できます。
低湿度・低露点領域で使用されるデシカント設備に採用されることが多く、有機EL、リチウムイオン電池、精密機器など、厳しい低湿度管理が求められる環境で活躍します。ただし、低露点性能は吸湿材の種類だけでなく、ローターの構造や再生条件などシステム全体の設計に大きく左右されます。
塩化リチウムは吸湿性の高い物質で、主に液体デシカント方式などで利用されます。塩化リチウム水溶液と空気を接触させることで、空気中の水分を溶液側へ取り込みます。
溶液の濃度や温度を制御することで、除湿だけでなく加湿を行う方式もあります。KARADESIで紹介している「カサバー」は、この塩化リチウム水溶液を利用する湿式デシカント方式であり、除湿と同時に空気中の粉じん等を取り込むという製品特性を持っています。なお、除菌などの性能については、メーカー公式の試験条件や根拠を併記して確認してください。
デシカント方式は、使用する吸湿材の状態によって「固体デシカント」と「液体デシカント」に分けられます。
固体デシカントはシリカゲルやゼオライトなどを利用し、ローターを回転させながら処理側と再生側を往復させる方式が代表的です。
液体デシカントは塩化リチウム水溶液などの溶液を利用し、溶液と空気を接触させて水分を取り込んだ後、溶液を再生させます。
それぞれ得意とする温湿度帯や設備構成、メンテナンスの内容が異なるため、環境に合わせて適した方式を選びます。
デシカントローターとは、固体デシカントを利用する設備において中心となる円筒形の部品です。ハニカム状の構造体にシリカゲルやゼオライトなどの吸湿材を担持させて作られています。
ローターの一部が処理空気(除湿したい空気)を通過して水分を吸着し、回転によって吸湿した部分が再生側へと移動します。そこで加熱された再生空気を当てて水分を放出させ、再び処理側へと戻ることで、連続的な除湿を可能にしています。
デシカントは無制限に水分を取り込めるわけではありません。水分を吸着・吸収していくと、徐々に除湿能力が低下します。そこで、デシカントから水分を放出させ、再び吸湿できる状態へと戻す工程が必要になります。これを「再生」と呼びます。
固体デシカントでは加熱した再生空気を当てる方式が一般的です。液体デシカントでも、水分を多く取り込んだ溶液から水分を除去し、濃度を元の状態に戻す工程を行います。再生に必要な温度や熱量は、デシカントの種類や設備方式によって異なります。
デシカント空調は、以下のサイクルを繰り返すことで連続運転を行います。
1. 湿った空気を設備へ取り込む
2. デシカントが空気中の水分を取り込む
3. 乾燥した空気を対象空間へ供給する
4. 水分を含んだデシカントを再生工程へ送る
5. 加熱などによって水分を放出する
6. 再生したデシカントを再び除湿に利用する
この仕組みにより、小袋の乾燥剤のように毎回入れ替える手間なく、安定した除湿を続けることができます。
一般的なエアコンの冷却除湿は、空気を冷やして露点温度以下にし、水蒸気を結露させることで水分を除去します。そのため、温度と湿度が連動しやすく、湿度だけを大きく下げたい場合には空気を冷やしすぎる(過冷却)課題が生じることがあります。
一方、デシカント除湿は、吸湿材によって水分を直接取り除く方式です。湿度を温度からある程度切り離して制御しやすいため、低湿度や低露点を求める環境に適する場合があります。ただし、目的の温湿度やエネルギー条件、設備規模によって最適な方式は異なるため、条件に合わせて選択することが大切です。
冷却除湿で低い露点を実現しようとすると、空気を大きく冷却しなければならず、条件によっては着霜対策や空気を暖め直す再加熱が必要になります。
デシカント方式は吸湿材で水分を直接除去するため、冷却だけでは実現しにくい低湿度領域にも対応しやすいのが特徴です。シリカゲルやゼオライトなど、低湿度域でも吸着性能を発揮する材料を活用することで、超低露点環境を構築しやすくなります。ただし、極めて低い露点を維持するには、ローターの性能だけでなく、ダクトの気密性や外気侵入の防止などシステム全体の設計が重要です。
露点(露点温度)とは、空気中の水蒸気が結露し始める温度のことです。同じ相対湿度であっても、空気の温度によって含まれる水分量は異なります。
低湿度を厳密に管理する製造現場などでは、相対湿度ではなく「露点」で空気中の水分量を管理する場合があります。-40℃DP、-60℃DPといった表記が使われ、この数値が低いほど空気中に含まれる水分が少ないことを意味します。
デシカント空調は、確実な湿度管理が求められるさまざまな場所で導入されています。
・食品工場
・医薬品工場
・リチウムイオン電池製造
・有機EL製造
・半導体・電子部品工場
・精密機器工場
・倉庫・物流施設
・冷蔵倉庫、冷蔵ショーケース周辺
・病院
・クリーンルーム、ドライルーム
必要な湿度条件や衛生基準によって、適するデシカント方式は異なります。
食品工場では、結露によるカビや衛生リスクを抑えるため、また包装工程での湿度管理や、粉体原料の吸湿・固着を防ぐためにデシカントが使われます。低温環境でも湿度を管理する必要がある場合、温度だけでなく水分量をコントロールすることが品質維持につながります。
KARADESIでは、チルド食品の冷却包装などの用途向けとして、液体デシカントの「カサバー」を紹介しています。
リチウムイオン電池や有機ELの製造など、微量の水分が品質へ影響を与える工程では、極めて低い露点が求められます。一般的な空調だけでは維持しにくい超低湿度環境を構築するため、ドライルームなどと組み合わせてデシカント除湿が利用されます。
KARADESIでは、こうした製造・開発環境向けとして「ドライセーブSSP/SZP」を紹介しています。製品ごとの到達露点や詳しい条件はメーカー仕様をご確認ください。
スーパーなどの店舗では、夏季の高湿度環境において冷蔵ショーケース周辺に結露や曇りが発生することがあります。これは冷たい表面へ湿った空気が触れることで起こります。
デシカント空調によって店内の空気中の水分量を抑えることで、結露しにくい環境づくりにつながります。KARADESIでは、冷蔵ショーケースの結露対策向けとして「カラットデシカント」を紹介しています。
デシカント空調には、以下のようなメリットがあります。
・低湿度・低露点環境を構築しやすい
・温度と湿度を分けて制御しやすい
・低温環境でも除湿できる方式がある
・冷却除湿で必要になる過冷却や再加熱を抑えられるケースがある
・排熱や温水などを再生熱源として利用できるシステムがある
・結露、カビ、製品の吸湿などの対策に活用できる
一方で、導入前に把握しておくべき注意点もあります。
・デシカントの再生に熱エネルギーが必要となる
・目標とする露点によっては大規模な設備になる
・吸湿材、ローター、フィルターなどの定期的なメンテナンスが必要
・粉じん、油分、薬品などによって性能が影響を受ける場合がある
・空調対象範囲や外気侵入を考慮した設計が必要
「デシカントだから必ず省エネになる」と一律に判断できるものではないため、条件に合った設計が重要です。
デシカント空調を選定する際は、以下のポイントを整理しましょう。
・目標とする温度、相対湿度、露点
・処理する空気量と外気条件
・使用する場所と粉じん・油分・薬品の有無
・利用可能な熱源と運転時間
・メンテナンス条件
デシカント材単体だけで判断せず、設備全体の仕様や用途との適合性を総合的に見ることが大切です。
デシカント材ごとに得意な吸湿特性は異なりますが、「どの材料が優れている」と単純に比較することはできません。同じ吸湿材であっても、加工方法や担持量、ローター構造によって性能は異なります。
また、実際の設備の性能は、再生温度、風量、ローターの回転速度、シール性などシステム全体に左右されます。製品選定では吸湿材の名称だけで判断するのではなく、自社が必要とする温湿度条件を達成できるかを確認し、運用条件での性能データをメーカーへ確認しましょう。
導入を成功させるため、事前に以下の項目を確認することをおすすめします。
・なぜ湿度を下げたいのか(結露対策か、品質管理か)
・どの程度の湿度・露点が必要か、対象範囲はどこか
・現在どのような空調方式を使っているか
・年間を通じて運転するか、既存の熱源を利用できるか
・除湿後の空気に対して温度調整が必要か
現地調査や負荷計算を行ったうえで、適切な設備を選定することが重要です。
デシカント空調に関して、よくある疑問をまとめました。
・デシカントは使い切りなのか?
設備内で再生を繰り返すため、使い切りではありません。ただし、長期間使用すると劣化するため、ローターや吸湿材の交換時期が来たらメンテナンスを行います。
・デシカントは夏だけ使うものなのか?
除湿が必要な環境であれば、冬場でも使用できます。低温環境での除湿にも対応できるため、年間を通じて稼働させる工場も多くあります。
・一般的なエアコンと併用できるのか?
可能です。デシカント外調機で湿度を処理し、室内のエアコンで温度を調整する「潜顕分離空調」といった使い方もよく採用されます。
吸湿材ごとの安全性や詳細な違いについては、使用する製品のメーカー仕様をご確認ください。
同じ「デシカント空調」であっても、使用する吸湿材や除湿方式によって得意な環境が異なります。
・チルド食品の冷却包装など、低温環境での湿度管理や衛生環境を重視する場合:カサバー
・有機EL製造・開発など、超低露点環境を重視する場合:ドライセーブSSP/SZP
・冷蔵ショーケース周辺の結露対策を重視する場合:カラットデシカント
それぞれの目的に応じて、最適なシステムを選びましょう。
デシカント空調についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・デシカント空調の仕組み・原理を徹底解説
・デシカント空調の種類|ローター式・ハイブリッド式など
・デシカントローターとは?構造・吸湿・再生の仕組み
・デシカント空調の露点温度とは?
・デシカント空調とコンプレッサー式空調の違いとは?
・デシカント空調のメリット・デメリットまとめ
・デシカント空調製造メーカー一覧・比較
デシカントとは、水分を吸着・吸収する性質を持つ乾燥剤や吸湿材の総称です。代表的なものにはシリカゲル、ゼオライト、塩化リチウムなどがあり、固体デシカントでは主に吸着、液体デシカントでは吸収を利用して空気中の水分を取り除きます。
デシカント空調では、水分を取り込んだ吸湿材を熱などで再生し、繰り返し使用することで連続的に除湿を行います。一般的な冷却除湿とは水分除去の原理が異なり、低湿度・低露点環境の構築に適する場合があります。吸湿材ごとに特徴はありますが、実際の設備性能は再生条件や設備構成を含むシステム全体で決まります。
導入を検討する際は、用途や必要露点、温度、処理風量などをしっかりと整理したうえで、自社の目的に合ったデシカント空調を選定しましょう。
画像引用元:株式会社ティーネットジャパン公式HP
(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
0℃付近で高い省エネ効率(乾式デシカント比約40%削減※1)を発揮し、低温環境での運用コストを大幅に削減。霜取り運転も不要なため安定した稼働が見込めます。
特殊溶液が結露・粉じんを抑え、製品トラブルを予防。除菌性(食塩水相当)により空気中の菌も除去※2し、HACCPにも対応可能です。
画像引用元:株式会社西部技研公式HP
(https://seibu-giken.com/products/287/)
機能性ハニカム構造を製造する技術と、特殊シリカゲルや合成ゼオライトを使用することにより、-90℃DPという超低露点に対応します。
クリーンブースの一体設計が可能。湿度制御の精度を高めることで、恒常的な超低湿制御が前提となる有機EL製造に対応できます。
画像引用元:日本特殊陶業公式HP
(https://niterra-air.com/)
天井埋め込み型なので店内の景観を損なわず、最短1日の夜間工事※3で設置が完了。営業への影響を抑えた導入が可能です。
独自開発の除湿素材を活用し、店内の湿度を40〜50%に保つことで、冷蔵ショーケースの曇りや結露の発生を抑えやすい空調環境を整えます。
※1 108.8kW→61.9kW 参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/files/products_kathabar/comparison_table.pdf)
※2 実証実験による結果。測定場所:某ビール工場 測定日時:1998年7月7日 測定機器:RCSエアーサンプラー(密閉状態で測定)
参照元:ティーネットジャパン公式HP(https://www2.tn-japan.co.jp/kathabar/contents/products/kathabar/)
※3 1台で約1日(スーパーマーケットの場合、閉店後~翌開店前まで)で設置可能。 参照元:日本特殊陶業株式会社公式HP(https://niterra-air.com/faq/)